研究課題
1990年度においては、山形県庄内地方に位置する酒田市北平田地区および鶴岡市京田地区に対象地を設定し、(1)地区内の農業の状況、特に稲作生産組織の現状についての調査、および(2)両地区それぞれに農家婦人約40名、合計約80名を対象者に選定して面接調査を実施し、農家の家族生活と婦人の意識について調査した。1.地区農業の現状としては、両地区とも、水稲単作地帯として永い歴史をもつ庄内地方に位置し、いぜん稲作が中軸であることに変わりはないが、近年における「転作」政策の影響もあって、微弱ながら蔬菜などのプラス・アルファ-部門の展開が見られる。しかし、圧倒的多数の農家は、農外就労依存を深めている。生産組織としては、かつてのような集落ぐるみの「集団栽培」は不可能となり、個別農家の利益になるかぎりでの、それぞれの契機ごとの有志共同が試みられている。2.農家の家族生活においては、いぜんとして農家経済の中心となる「主家計」は存在するものの、夫婦ごとの「別勘定」を保持している家が多く、それにもとづいてリクリェ-ションなども夫婦単位になっている。これは、家の旧秩序の解体といってよいが、しかし世代をことにする夫婦間のコンフリクトをうみだす傾向があることも否定できない。