老いと死に関する人間形成論的総合研究-生涯教育の統合的・原理的基礎づけのために

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01301031
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 岡田 渥美 京都大学, 教育学部, 教授 (70027960)
• 研究分担者: 吉田 敦彦 美作女子大学, 家政学部児童科, 講師 ; 山口 充 近畿大学, 教職教育部, 助教授 ; 田中 毎実 愛媛大学, 教育学部, 助教授 (70093432) ; 野々村 昇 活水女子大学, 文学部, 助教授 ; 山崎 高哉 京都大学, 教育学部, 助教授 (60068749)
• キーワード: 老い / 死 / 世代 / 人間形成 / 生涯教育 / 生涯学習 / 人間形成論 / 教育人間学

研究概要

1.文献の整理・検討。「老いと死」と「教育」とのかかわりを直截に主戻化したのは今日の生涯教育ないし学習論であるが、残念ながら、そこにおける議論は原理的にみても統合論的にみても甚だ不十分である。この主題に関する今日入手可能な文献としては、(1)哲学的・宗教的な原理的考察帥展開している文献、(2)実証的な部分的知見を記述したりこれらを統合しようとする文献、(3)「準備教育」という当面の対処療法を目指す実践的な文献などがあるが、これら広凡な文献を可能な限り検討した結果、そのいずれも不十分であり、「老いと死」に関して原理論的・人間形論的な考察を加えた研究はおよそみられないことが明らかとなった。
2.研究全体的枠組み。老年期においては、"Have"から"Be"へ、"Production"から"reduction"への生き方の根本的転換が課題づけれらるが、この課題達成の成否は、それまでの生涯のありようによって規定される。この意味で、老いは、各人の人生の集約(Consummation)なのである。他方、人間存在にとって死が不可避であることから、各人は、自分の一生をなんとかして自己完結すべく、しかも自ら世代連鎖の一環となることによって自己の有限性を克服すべく努力することを強いられる。一般的に言って、人間形成は異世代間の"Mutual Regulation"を通じての他者形成と自己形成との相互連関にかいて成立するといえるが、このような人間存在と形成の根本構造が際立って鮮明となるのは、老いと死という特殊な局面においてなのである。
3.次年度の研究分担。以上の枠組みの追求を通じて、老いと死への準備教育、危機ないし非連続性としての老いと死、老いと死における時間性、老いと死と生の意味、老いと死にかかわる異世代間の"Mutual Regulation"、老いと死の人間形成論、などの次年度の研究分担を策定した。今後、これに従って研究の総括を目指す。

研究成果

• [文献書誌] 山崎高哉: "老人の人生課題と教育的役割" 京都大学教育学部紀要. 37巻. (1991)
• [文献書誌] 野々村昇: "老いと意味" 活水論文集-家政科・一般教育・音楽科編. 34集. (1991)
• [文献書誌] 田中毎実: "ライフサイクルと人間形成" 愛媛大学教育学部紀要第1部. 35巻. 1-44 (1989)
• [文献書誌] 田中毎実: "おとなの未成熟と異世代間相互作用" 教育統学研究. 61号. (1990)
• [文献書誌] 山口充: "老年期の人生課題としての「知恵」" 近畿大学教育論業. 4号. (1991)
• [文献書誌] 吉田敦彦: "死生観のなかの時間と他者" 美作女子大学紀要. 36号. (1991)
• [文献書誌] 村島義彦: "「老」と「死」を考える-生涯教育の後半の課題として" 岡山理科大学紀要. 26号B. (1990)
• [文献書誌] 矢野智司: "老いの回心" 香川大学教育学部研究報告第1部. 82号. (1991)
• [文献書誌] 伊藤一也: "老年期における危機の問題-その人間学的考察" 愛媛大学教育学部紀要第1部. 37巻. (1991)
• [文献書誌] 大西正倫: "生の構造と死の覚悟" 大谷大学哲学会哲学論集. 37号. (1991)
• [文献書誌] 北岡宏章: "老いにおける生きがいと退屈" 大阪府立工業高等専門学校研究紀要. 25巻. (1991)
• [文献書誌] 毛利猛: "人間存在の時間的構造と実存論的な「死」" 香川大学教育部研究報告第1部. 82号. (1991)
• [文献書誌] 皇紀夫: "目黒十中事件について(下程勇吉編・書名未定)" 広池学園出版部, (1990)
• [文献書誌] 田中毎実: "子どもと大人(教育関係)(和田修二・山崎高哉編「教育原論」所収)" 協同出版, (1991)
• [文献書誌] 矢野智司: "子どもと大人(教育関係)(和田修二、山崎高哉編「教育原論」所収)" 協同出版, (1991)