研究課題/領域番号 |
01301049
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
鈴木 一州 神戸大学, 教養部, 教授 (40031306)
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研究分担者 |
杉村 貞臣 関西学院大学, 文学部, 教授 (90103126)
田中 穂積 関西学院大学, 文学部, 教授 (60098324)
栗原 優 神戸大学, 文学部, 教授 (70030129)
鈴木 利章 神戸大学, 文学部, 教授 (30073357)
桂 圭男 神戸大学, 教養部, 教授 (80031285)
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キーワード | 文化衝突 / 異文化適応 / 文化構造 / 聖人崇拝 / ブラウン・ベス精神 / 反ユダヤ主義 / オスマニザシオン / プロ-ウォカ-ティオ- |
研究概要 |
西洋史上、文化衝突は文化形成の主要契機である。我われは従来の一方的文化征服観に与さない。内的文化衝突(基層文化と表層文化の確執など)、外的文化衝突(傳統文化と外来文化の相剋など)は、競合する文化双方に多かれ少なかれ異文化適応や自己変革を迫るのであり、しばしば内的、外的文化衝突の同時進行が文化情況を流動化して、新文化形成を促すのである。この見地から我われは、文化衝突の構造、展開過程、固有の特色を各自の分担課題に即して追求している。本年度の研究活動と成果は、以下に適記する通りである。 従来の研究方法を洗い直すため、植田俊郎がフランス精神史、心性史その他をめぐる文化諸理論を総括し、田中きく代がアメリカ政治文化の多元的衝突構造を解くべきエスニシティ理論を整理して報告した。森田鉄郎は文化衝突の歴史的展望を例示した。即ち、エトルスキ、ケルト、ギリシア、ゲルマン等による複雑な文化衝突の所産、古代ロ-マ文化を継承するロ-マこと外来ゲルマニとの文化衝突から中世イタリア文化が形成され、やがて中世イタリア文化とサラセン文化の競合、相互受容の過程で、ルネサンスの成立要因が育まれたと見る。 分担研究における新たな知見としては、拓植一雄がパピルス文書「陶工の神託」を取り上げた。ヘレニズム期アレクサンドリア市の民族対立、文化衝突を探る鍵である。鈴木利章は聖人崇拝に着目し、ここからアングロ・サクソン文化とアングロ・ノルマン文化の抗争を追求している。根無喜一はヴイクトリア期イギリス陸軍の兵制改革挫折の背後に技術主義と精神主義の葛藤を読み取った。栗原優は、ナチ党員大衆の反ユダヤ主義昂揚がヒトラ-を衝き動かして、食糧難を契機にマダガスカル強制移住から民族絶滅への轉換を決意させたという詳細な研究を発表した。
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