研究概要 |
日本列島新生代に噴出したソレアイト系列、高アルミナ玄武岩系列、カルクアルカリ系列およびアルカリ系列に属する代表的な火山岩類と上部マントル由来超苦鉄質と下部地殻由来苦鉄質捕獲岩類の主成分・微量成分について重量法、炎光法、原子吸光法、蛍光X線法、光量子放射化法、ICP‐Mas法や質量分析法などを併用して40種類以上の元素を定量した。また質量分析法によりSr・Nd同位体比を測定した。それらの結果のうち、本年度の研究成果について顕著なものについて幾つか記述する。 1、八幡平火山群においては様々な組成の溶岩が噴出している。本火山群の岩石はこれまで単純にソレアイト系列とカルクアルカリ系列の2つに分けられていたが、これらはお互いに漸移的なものであることが明らかとなった。また時間的にも空間的にもある程度規則性があり、西から東へカルクアルカリ系列からソレアイト系列へと変化する。 2、沖縄トラフは現在活発な背弧海盆拡大の初期段階にある。中新世〜現世に至る間に噴出したマグマは安山岩が主体の活動からバイモ-ダル活動へと変化した。玄武岩類は沈み込み帯の火山岩に共通した高いLIL/HFS比をもつカルクアルカリ質岩から背弧海盆玄武岩へと変化し、これはプレ-トの沈み込みに関係していないアセノスフェア-がウエッジマントルに貫入したことに起因する。さらにこのアセノスフェア-の貫入により沖縄トラフは能動的に拡大した。 3、隠岐、島後の集積岩起源超苦鉄質〜苦鉄質捕獲岩の非調和元素規格化パタ-ンをみると、超苦鉄質岩は非調和元素濃度が非常に少なく、傾向は分からないが、苦鉄質岩は顕著なBs,K,Sr正異常とNd,Zr負異常を示し、明らかに水に乏しい島弧そソレアイト〜高アルミナ玄武岩・マグマからの早期晶出鉱であることを示す。壱岐のものも同様の傾向を示す。一方、一の目潟の苦鉄質捕獲岩はいずれも主成分〜副成分鉱物として普通角閃石を含むが、これも顕著なBa,K,Sr正異常とNb,Zr負異常を示し、またSr・Nd同位体比はマントル・アレイの上にあり、かつ日本列島の島弧火山岩の領域に点示される。つまり日本列島の基盤は島弧玄武岩の集積岩起源の物質から構成され、大陸地殻や海洋地殻が欠如していると推定される。
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