光合成初期過程の分光学的研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01302064
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 加藤 栄 東京大学, 理学部, 教授 (50011515)
• 研究分担者: 井上 頼直 理化学研究所, 主任研究員 (70087592) ; 佐藤 公行 岡山大学, 理学部, 教授 (10032822) ; 野沢 庸則 東北大学, 工学部, 教授 (10006322) ; 櫻井 英博 早稲田大学, 教育学部, 教授 (10063645) ; 田隅 三生 東京大学, 理学部, 教授 (60011540)
• キーワード: 光合成 / エネルギ-移動 / カロチノイド / 電子伝達 / 光化学系I / 光化学系II / 分光測定 / 蛍光

研究概要

種々の光合成生物から分離した標品について、多様な分光測定を行い多くの新しい知見を得た。
1.光合成色素系ーー光合成細菌の反応中心標品の磁氣円偏光二色性の測定から、反応中心クロロフィルの高エネルギ-励起子遷移が確認され(野沢)、また集光性色素蛋白質でのカロチノイドからバクテリオクロロフィルへのエネルギ-移動の効率は、カロチノイドの共役系の長さが長くなるか、またはねじれると低下することが見出された(田隅)。さらに反応中心クロロフィルよりも低エネルギ-準位のアンテナ成分が存在することが示された(三室)。ピコ秒ーフェムト秒分光測定により、同種または異種色素間のエネルギ-移動の速度が詳細に測定された(山崎、小林)。
2.光化学系Iーーエ-テル処理でPー700を失活させた系I標品にクロロフィルaを加え、Pー700を再構成することにはじめて成功した(池上,加藤)。またPー700の差分子吸光係数が、アンテナクロロフィルのバンドシフトにより変化することを見出した(加藤)。Hgcl_2処理によりF_Bを選択的に失活させた標品で内光照射によりF_Aが還元されること、さらにA_1またはA_2からの逆反応が起きることが示された(桜井)。
3.光化学系IIーー安定な系II反応中心複合体の調製法が改良され、そのサブユニットや色素の量比が確立した(佐藤(公))。酸素発生標品については、EPR測定により、P680,チロシンDと水分解系の相対的な距離が求められ(河盛)、トリス処理後の熱発光にヒスチジンのカチオンアジカルが関与することが推定された(井上)。またQ_B部位に対するベンゾキノンの親和性はメチル基とハロゲン基の導入により、正反対方向の影響を受けることが示された(佐藤(和))

研究成果

• [文献書誌] Sonoike,K & Katoh,S.: "Variation and estimation of the differential absorption coefficient of Pー700 in spinach photosystem I preparations." Plant and Cell Physiology. 31. 1079-1082 (1990)
• [文献書誌] TanakaーKitatani,Y.,Satoh,K.and Katoh,S.: "Interactions of benzoquinone with Q^ー_A and Q^ー_B in oxygenーevolving photosystem II particles from the thermophilic cyanobacterium <Synechococcus elongatus>___ー" Plant and Cell Physiology. 31. 1039-1047 (1990)
• [文献書誌] Noguchi,T.,Hayashi,H.and Tasumi,M.: "Factors controlling the efficiency of energy transfer from carotenoids to bacteriochlorophyll in purple photosynthetic bacteria" Biochimica et Biophysica Acta. 1017. 395-398 (1990)
• [文献書誌] Nozawa,T.,Noguchi.T.and Tasumi,M.: "Resonance Raman Studies on the Structure of Bacteriochlorophyll c in chlorosomes from <Chloroflexus>___ー <aurantiacus>___ー" Journal of Biochemistry. 108. 737-740 (1990)
• [文献書誌] Ono,T.and Inoue,Y.: "Abnormal redox reactions in photosynthetic O_2ーevolving centers in NaCl/EDTAーwashed PSII.A darkーstable EPR multiline signal and an unknown positive charge accumulator" Biochimica et Biophysica Acta. 1020. 269-277 (1990)
• [文献書誌] Mimuro,M.,Katoh,T.and Kawai,H.: "Spatial arrangement of pigments and their interaction in the fucoxanthinーchlorophyll a__ー/c__ー protein assembly (FCPA) isolated from the brown alga <Dictyota>___ー <dichotoma>___ー Analyaia by polarized spectroscopy" Biochimica et Biophysica Acta. 1015. 450-456 (1990)