研究概要 |
本年度は、研究第二年度であり、前年度に引続いていくつかの地域の鉱床については野外調査を継続すると同時に,前年度同様の室内作業にに研究の重点をおいた。作業の主なものは,スカルン形成の際の熱水溶液の起源と挙動を知るため同位体的解析とシミュレ-ション,また形成の際の物質の移動のメカニズムとその速度を知るための鉱物相の解析および鉱物内での微小領域での組成変動の解析,およびその解析に必要な基礎的デ-タ取得のための熱水合成実験などである。これらの調査と室内作業は12名の研究者により有機的に行われており,全体の進行状況はほヾ予定通りである。平成2年10月1日に山口大学において研究連絡会を開き,各自のこれまでの成果について発表し,討論を行った。その成果のうちの主なものは以下の通りである。 1.本邦を代表する都茂鉱床・八茎鉱床・釜石鉱床では鉄・銅あるいは銅・鉛・亜鉛の鉱化に重複してタングステンの鉱化作用がみられることが判明した。これは二種の異なる鉱液の活動によるものであり,これら鉱液は起源の上でも異なる可能性が指摘された。 2.都茂鉱床の鉱物について酸素同位体比の測定がなされた。その結果を解析し,これら鉱物を沈澱させた鉱液の同位体組成に直してみると,鉱液は一種類ではなく,少くとも二種類たとえばマグマ起源の熱水と天水起源の熱水が関与していたことが判明した。 3.スカルン形成時における金属元素の挙動を知る上の基礎的デ-タをうるためにZnSーFeSーMnS系鉱物と塩化水溶液間における陽イオン交換平衡実験を400゚と600℃,1000気圧で行った。その結果ZnSーFeS閃亜鉛鉱固溶体はおおよそ理想溶液として扱えることが判明した。またZn>Fe>Mnの順に液相よりは固相に濃集しやすいことが判明した。
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