研究概要 |
植物病原菌により誘起される病徴および植物側の防御機構発現には相互作用物質が関与している。本研究課題はこれら相互間作用物質に着目し,病原菌の産生する生理活性物質の単離,化学構造の決定,合成方法の開発,生合成機構の解明,活性物質の新しい利用法の開発などを行なうとともに宿主植物の防御機構についても同様の検討を加えて総合的な生物有機化学的研究を展開することを目的としている。 カキ円星落葉病菌や枯損松からの分離菌などの病原菌から,培養条件の検討,生理活性試験方法の開発などにより,ウスニン酸系化合物2種,pinthunamide関連化合物3種の新規生理活性物質の単離と構造決定を行なった。これら新規化合物の植物毒性,生合成機構についても実験を行なった。 さらにイネ葉中に含まれる新規先在性抗菌物質oryzalideAの構造決定を行ない,イネの白葉枯病に対する構成的抵抗性機構について検討した,またアズキ落葉病に関して,宿主に弱病原性菌を接種することによる宿主植物の誘導抵抗性の検討を行ない,宿主に生成される抗菌物質の単離と構造決定および交叉防御の可能性を追求した。 宿主特異的毒素による宿主植物ー毒素間反応機構について,リンゴ斑点落葉病やトウモロコシゴマ葉枯病における病害発生の品種間差異について,ホスト植物の毒素受容体について検討を行なった。 本年度は6月8日に公開シンポジウムを北海道大学学術交流会館で開催した,各研究分担者の発表が行なわれ,約200名の参加者と活発な質疑応答がかわされ,本研究課題の進展に資するものがあった.
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