初期発生における細胞分裂制御機構

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01304005
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 片桐 千明 北海道大学, 理学部, 教授 (90000827)
• 研究分担者: 清水 隆 北海道大学, 理学部, 助教授 (50113569) ; 平本 幸男 放送大学, 教養学部, 教授 (50011440) ; 馬渕 一誠 東京大学, 教養学部, 助教授 (40012520) ; 根本 心一 お茶の水大学, 理学部, 助教授 (60017209) ; 岸本 健雄 東京工学大学, 理学部, 教授 (00124222)
• キーワード: 卵核胞 / 卵成熟分裂 / 卵熟成促進因子 / サイクリン / 分裂装置 / 表層細胞質 / 分裂溝 / アクチン繊維

研究概要

ヒトデ卵母細胞をプロナ-ゼ及びサイトカラシンBで破砕後、ショ糖密度勾配遠心により卵核胞(GV)を大量に分離する方法を確立した。分離されたGVの100kxg上清を無核卵片に注入すると、卵成熟分裂周期に同調して起こる卵のかたさの変化が注入量に依存して回復した。同様のGV誠料をGV除去卵に由来する細胞質抽出液に加えることによって、in vitroで卵成熟促進因子(MPF)の増幅をひきおこす系を確立し、GV中にはcdc2蛋白質、サイクリンのいずれとも異るMPF増幅因子が含まれることがわかった。他方、カエル卵では、GV除去した卵片でも有核卵と同じく成熟分裂と同調して卵のかたさの変化及びMPFの出現が2度起こる。しかし成熟分裂終了後は卵のかたさ、MPFともに卵割に同調した消長を示さず、高い種を保ちつづける。MPFについては、ヒトデ卵由来のサイクリンmRNAを注入することにより、同種のみならずカエル卵の成熟をも誘導することができた。(片桐・岸本・根本)
卵内での分裂装置(MA)の空間的配置及び分裂溝形成における表層細胞質の役割を検討した。イトミミズ4細胞期胚のMAを遠心によって割球の一方の極に寄せておくと、MAは常に割球内の本来存在すべき位置(動物極)に戻ることがわかった。分裂開始直前のウニ卵のMAを顕微手術的に表層に押しつけると、MA自体は著しく変形するにもかかわらず表層は殆んど変形しなかった。他方、単離した表層でも分裂溝が形成された。これらのことは、分裂準備期、分裂期いずれにおいても表層細胞質が重要な働きをしていることを示す。更に、分裂溝形成に関与する表層アクチンの分布をウニ卵について調査したところ、分裂溝が形成される前にアクチン繊維が分裂予定域に畜積し、しかも繊維は束を形成していることがわかった。このアクチン繊維束の形成過程にミオシンが関与することも明らかとなった。(馬淵、平本、清水)

研究成果

• [文献書誌] Yamamoto,K.& S.Nemoto: "Absence of species-specificity of germinal vesicle factor requiring for the cytoplasmic cycle during meiotic division." Develop.Growth,Differ.32. (1990)
• [文献書誌] Shilling,F.,L.A.Jaffe & T.Kishimoto: "Pertussis toxin inhibits l-methyladenine-induced maturation in starfish oocytes." Develop.Biol.133. 605-608 (1989)
• [文献書誌] Ohsumi,K.& Ch.Katagiri: "Dependence on germinal vesicle materials of the cyclic changes of nuclear behavior and cytoplasmic rigidity in activated frog eggs." Develop.Growth,differ.32. (1990)
• [文献書誌] Shimizu,T.: "Polar body formation in Tubifex eggs." Ann.N.Y.Acad.Sci. (1990)
• [文献書誌] Shinagawa,A.,Y.Yoshimoto& Y.Hiramoto: "Nuclear involvement in localization of the initiation site of surface contraction waves in Xenopus eggs." Develop.Growth,Differ.,. 31. 249-255 (1989)
• [文献書誌] Sutoh,K. & I.Mabuchi: "End-label fingerprintings show that an N-terminal segment of depactin participates in interaction with action." Biochemistry. 28. 102-106 (1989)