造血支持細胞の特性に関する研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01304032
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 北村 幸彦 大阪大学, 医学部, 教授 (70028520)
• 研究分担者: 平嶋 邦猛 埼玉医科大学, 教授 (00165169) ; 丹下 剛 東京大学, 医学部, 講師 (10107667) ; 小玉 博明 奥羽大学, 歯学部, 講師 (20118376) ; 森 和博 新潟大学, 理学部, 教授 (90025635) ; 日合 弘 愛知がんセンター研究所, 部長 (10073131)
• キーワード: 造血支持細胞 / 造血幹細胞 / 造血刺激因子 / IL-3 / G-CSF / GM-CSF / 細胞間接触

研究概要

1)北村はマスト細胞の線維芽細胞による増殖刺激についてしらべた。最初に用いたNIH/3T3細胞では、マスト細胞とNIH/3T3細胞の間をミリポア膜あるいは軟寒天で隔てると、マスト細胞の増殖が止まり、やがて死滅したが、BALB/3T3細胞を用いると、ミリポア膜や軟寒天で隔てても、マスト細胞の増殖は維持された。BALB/3T3細胞の培養上清中にもマスト細胞の増殖を刺激する活性がみとめられたので、線維芽細胞にはマスト細胞増殖因子を分泌するものと細胞膜上に表現するものの2種類が存在すると考えられた。2)日合は胸腺の間質細胞とリンパ球の間の相互作用についてしらべた。間質細胞とリンパ球の間の接着はマウス血清中にある因子により抑制される。日合はこの因子の単離を試みている。3)森はIL-3を産生する白血病細胞株L8813を脾摘したマウスに移植した。脾摘しない対照マウスではIL-3の刺激によって顆粒球増多がひきおこされるが、脾摘マウスではおこらず、この実験系ではIL-3刺激による顆粒球生産の場として脾臓が必須であることが示された。4)小玉はPA6前脂肪細胞の造血支持能力をしらべるための標的細胞として白血病細胞株を用いた。PA6細胞と共生培養することにより、PA6細胞依存性の白血病細胞株が得られた。5)丹下はヒト巨核芽球の細胞株T-33を樹立した。T-33細胞はタイロシンカイネ-ス活性を持つC-yes蛋白を生産するが、TPAで処理するとその活性が減弱した。6)平嶋はG-CSFあるいはGM-CSFを骨髄性白血病細胞を移植したマウスに投与した。G-CSF、GM-CSFとも白血病によるマウスの死をおくらせる効果があった。この効果は白血病細胞の自己複製の抑制によるものと考えられた。7)片桐はアフリカシメガエルの色々な白血球に対する単クロ-ン抗体を作製し、白血病の発生過程をしらべた。

研究成果

• [文献書誌] Kitamura,Y.: "Heterpgeneity of mast cells and Phenotypic Change between subpopulations." Anuual Review of Immunology. 7. 59-76 (1989)
• [文献書誌] Onoue,H.: "Suppressive effect of SL/SL^d mouse embryo-derived fibroblast cell lines on diffusible factor-dependent proliferation of mast cells." Blood. 74. 1557-1562 (1989)
• [文献書誌] Nakano,T.: "Different repopulation profile between erythroid and nonerythroid progenitor cells in genetically anemic W/W^v mice sfter bone marrow transplantation." Blood. 74. 1552-1556 (1989)
• [文献書誌] Udagawa,N.: "The bone marrow-derived stromal cell lines MC-3T3-G2/PA6 and ST2 Support osteoclast-like cell differentiation in cocultures with mouse spleen cells." Endocrinology. 125. 1805-1813 (1989)
• [文献書誌] Sudo,T.: "Interleukin 7 production and function in stromal cell-dependent B cell development." Journal of Experimental Medicine. 170. 333-338 (1989)
• [文献書誌] Kitamura,T.: "Establishment and characterization of a unique human cell line that proliferates dependently on GM-CSF,IL-3,or erythopoietin." Journal of Cellular Physiology. 140. 323-334 (1989)
• [文献書誌] Kitamura,Y.: "Mechanism of mast cell defficiency in mutant mice of W/W^v and Sl/Sl^d genotypes.In Mast Cell and Basophil Differentiation and Function in Health and Disease" Raven Press,New York, 348 (1989)
• [文献書誌] Kitamura,Y.: "Ontogeny of mast cells.In The Immunology of the Fetus" CRC Press,Boca Raton,FL, 320 (1990)