日本に於ける工業化学物質の生物学的モニタリングの基礎的研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01304035
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 緒方 正名 岡山大学, 医学部, 教授 (70032844)
• 研究分担者: 野見山 一生 自治医科大学, 教授 (80048967) ; 堀口 俊一 大阪市立大学, 医学部, 教授 (60046828) ; 桜井 治彦 慶応義塾大学, 医学部, 教授 (70051357) ; 池田 正之 京都大学, 医学部, 教授 (00025579) ; 荒記 俊一 東京大学, 医学部, 教授 (00111493)
• キーワード: 生物学的モニタリング / 代謝の正常値 / 重金属 / 有機溶剤代謝産物 / 暴露の判別限界 / 分布型 / 飲酒 / 喫煙

研究概要

生物学的モニタリングに関する日本人正常値の基礎的試料として以下の研究成果を得た。
1.正常値及び暴露判別限界値の設定:(1)測定対象;重金属及び有機溶剤の尿中代謝産物について、重金属及び溶剤の非暴露者における代謝等の正常値を求めるための対象群として、事務作業者を選択した。そして20代、30代の男子について尿中各物質を測定し、これを5歳及び10歳ごとの階層に分けて統計処理を行った。(2)有機溶剤の尿中代謝産物等;ベンゼン、フェノ-ルの代謝産物である尿中フェノ-ルの濃度、トルエンの代謝産物である尿中馬尿酸の濃度、及びメタノ-ル及びアセトン暴露時に出現する尿中メタノ-ル、アセトンの濃度について正常値を求め得た。また外国人の正常値としては、中国人の尿中馬尿酸濃度の正常値を求め得た。(3)重金属;カドミウムの血中、尿中濃度、鉛の尿中濃度の正常値を求めることができた。また、カドミウムの生体影響を示す物質である尿中β_2-ミクログロブリン、及び鉛のそれである尿中δ-アミノレブリン酸の濃度の正常値を測定することができた。尚、尿中カドミウム、β_2-ミクログロブリンに関しては国内の3地方の試料について同一機関による測定値を求め得た。(4)暴露判別限界値の設定;重金属、有機溶剤の代謝産物について、正常値を求めた。そして正常値の分布について、正規分布および対数正規分布を仮定した場合の平均値、標準偏差を求め、生体試料を用いて暴露の推定を可能とする限界値として正常値の90%〜95%レンジの上端値を算出した。
2.正常値に関する変動要因:姉妹染色体交換頻度に対する喫煙の影響を検討した。そして喫煙群は非喫煙群に比べて、ベ-スライン姉妹染色体交換頻度の高いことを認めた。又、血中、尿中カドミウム、尿中β_2ミクログロブリンについても喫煙の影響を検討した。飲酒の姉妹染色体交換頻度に対する影響については検討の予定である。

研究成果

• [文献書誌] Shunichi Horiguchi: "Biological monitoring of lead." Biological Monitoring of Exposure to Industrial Chemicals(ACGIH)affiliated with Applied industrial hygiene. (1990)
• [文献書誌] Kazuo Nomiyama: "Biological monitoring of cadmium exposure and health effects measurements of urinary cadmium and microglobulin." Biological Monitoring of Exposure to Industrial Chemicals(ACGIH)affiliated with Applied industrial hygiene. (1990)
• [文献書誌] Haruhiko Sakurai: "Biological monitoring of cadmium-exposure workers." Biological Monitoring of Exposure to Industrial Chemicals(ACGIH)with affiliated with Applied industrial hygiene. (1990)
• [文献書誌] Masana Ogata: "Data base for biological monitoring of aromatic solvents." Biological Monitoring of Exposure to Industrial Chemicals(ACGIH)affiliated with Applied industrial hygiene. (1990)
• [文献書誌] Kanehisa Morimoto: "Effect of physiological and metabolic differences between the Japanese and American polulations on uptake,Distribution and elimination of toxic chemicals." Biological Monitoring of Exposure to Industrial Chemicals(ACGIH)affiliated with Applied industrial hygiene. (1990)
• [文献書誌] Shunichi Araki: "Units of determinants in urine." Biological Monitoring of Exposure to Industrial Chemicals(ACGIH)affiliated with Applied industrial hygiene. (1990)
• [文献書誌] 原田章、緒方正名、井上尚英、河野慶三: "鉛健康診断のすべて" 全国労働衛生連合会, (1990)
• [文献書誌] 緒方正英、原田章、井上尚英、河野慶三: "有機溶剤健康診断のすべて" 全国労働衛生連合会, (1990)