研究課題
本研究は、1990年7月22ー27日、国立京都国際会館で開催される第22回国際応用心理学会議において、応用心理学の研究成果の国際性を検討し、各国、とりわけ日本の独自性を明らかにするものであった。このために応用心理学の諸研究領域において、予め、各国の最新研究成果を集約し、その国際的一般性と、わが国の研究の独自性を検討した。具体的には、領域別研究班を設置し、各研究班は、国際応用心理学会のネットワ-クを利用し、かつ、国内諸学会の意見を聴取しながら各国、およびわが国における最新研究動向を集約した。わが国の応用心理学研究は、今世紀初頭に開始され、きわめて広範囲の研究が行われ、独創的研究も多く行われてきている。その一部について報告する。わが国の組織心理学の特徴は、グル-プ・ダイナミックス研究にある。例えば、組織内におけるキャリア発達についての系統的研究、また特に、組織内でのリ-ダ-シップ、意思決定についての膨大なアクション・リサ-チ、フィ-ルド実験、実験室実験研究である。環境心理学研究の特徴の一つはわが国の高人口密度に伴う騒音研究、今一つは建築家等を含む学際的な人間ー環境系研究であり、これは新しくまた未来指向型の分野である。臨床心理学の特徴は禅の研究、森田療法にある。相談心理学では登校拒否、家庭内暴力等の社会問題に関連したものに特徴がある。交通心理学では運転適性、運転者教育、国際比較研究、運転者の情報処理研究に特徴がある。経済心理学では消費者行動研究、林の数量化理論の展開と適用にある。上記はわが国の応用心理学研究の特徴の一部であるが、これらを含め、研究発表の大部分は国内誌に限られ、海外にその独自性が知られてこなかったものも多い。本研究の成果は本年の第22回国際応用心理学会議で活かされ、今後の応用心理学研究の国際的指針を与えるものである。
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