研究概要 |
本年度の発掘調査は,大室古墳群中のムジナゴ-ロ単位支群第185号墳および第186号墳について実施した。次下,調査結果について概述する。 (第185墳)分布調査の際に,後世の開墾による積石ではないかとの疑問もあったが,現状を実測のうえ発掘調査した。その結果,墳丘の積石の大半は、後世の攪乱による石積みであったが,内部主体と一部分の墳丘積石が遺存していた。内部主体は箱形石棺と推定されるが,棺材の天井蓋石と側壁石の大半が抜き去られていて原状をとどめていなかった。また,墳丘積石のあいだや,墳裾に土師器片を検出した。土師器片は,観察の結果,和泉式土器と推定され,西暦5世紀代末葉の年代が与えられる。棺内の副葬品は発見できなかった。 (第186号墳)昨年度からの継続調査で,主として内部主体である横穴式石室と,前庭部周堀の一部について調査を実施した。石室は南に向けて開口しており,閉塞部は大半が遺存していた。石室平面プランは,やや胴張りを呈する両袖型石室で,玄門に柱石を立て〓石を架けたものである。羨道は玄室より一段高くつくられており,角礫による閉塞石がつめ込まれていた。石室全長9.7m,玄室長4.6m,幅1.8m,高さ1.7m,羨道長3.9mを計測する。副葬品のほとんどは盗掘によって失なわれているが,鉄鏃,挂甲小札片,ガラス小玉などが遺存していた。昨年度,前庭部から発見された須恵器の型式的所見とあわせ考えると,西暦6世紀代後半の築造年代が推定される。また,昨年度調査で発見された馬の下顎歯(石室前庭東側)出土地点の周辺を再調査したが,他の四肢骨を発見できなかった。
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