地域社会の国際化と法

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01410015
• 研究機関: 静岡大学
• 研究代表者: 山崎 真秀 静岡大学, 人文学部, 教授 (40034558)
• 研究分担者: 三木 義一 静岡大学, 人文学部, 助教授 (90102467) ; 田中 克志 静岡大学, 人文学部, 教授 (40115142) ; 松田 竹男 静岡大学, 人文学部, 教授 (30022437) ; 名和 鉄郎 静岡大学, 人文学部, 教授 (70022423) ; 坂本 重雄 静岡大学, 人文学部, 教授 (10021825)
• キーワード: 地域社会 / 国際化 / 外国人 / 外国人労働者 / 留学生 / 国際交流団体 / 社会保障 / 刑事手続

研究概要

本研究のテ-マは、外国人にとっての生活環境という観点から日本の地域社会を見直してみることである。具体的な生活の場である地域社会は、これまで、住民が日本国籍をもった人種的日本人であることを当然の前提としてきており、外国人が一時的な訪問者ではなく、住民の1人としてそこで生活しようとすると、さまざまな不都合、不利益があった。国境を越えた人間の移動が増大しつつある今日、このような内外国人間の差別は可能な限りなくさなければならないが、それだけでなく、外国人をも住民の1人として、そのニ-ズにこたえうる社会は、同時に日本人住民1人1人の異なった条件に配慮し、ニ-ズにこたえうる社会でもあるはずである。その意味で、本研究の目的は、外国人向けの施策を探求することではなく、内外国人に関係なく住民1人1人を大切にする地域社会の実現そのことにあった。
このような観点から、我々はまず、各地の自治体及び民間団体が掲げている「国際化」の意味や活動・施策内容を分析した。一言でいって、大部分の自治体や団体にとって「国際化」とは、未だ外国人を「お客様」として迎える水準を出てはいない。外国および外国人との接触を同質的な地域社会の活性化に利用しようとはしているが、同質的な地域社会そのものの改革という視点はまれである。
次に、教育、医療、福祉、労働など各領域での外国人の取り扱いを分析した。その結果、法制度の上では80年代以降かなりの改善がみられるが、地方選挙権の否定および地方公務員への採用拒否が大きなネックとなっていること、また、法制度上内外人平等が実現された部分についても、それを裏付ける事実条件や住民意識が整わないために、実質的な平等待遇には至っていないことが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] 坂本 重雄: "社会保障法の外国人適用" 週刊社会保障. 1543号. 46-47 (1989)
• [文献書誌] 大出 良知: "外国人刑事事件の担い手たち(座談会)" 法と民主々義. 242号. 30-49 (1989)
• [文献書誌] 佐藤 信一: "米ソ関係" 田中浩編『現代世界と国民国家の将来』所収(お茶の水書房). 1100-1114 (1990)
• [文献書誌] 本間 重紀: "国際化時代の流通規制" 日本流通学会年報『流通』. 第2号. 85-92 (1989)
• [文献書誌] 田中 克志: "統計資料から見た静岡県在住外国人の実態" 静岡大学『法経研究』. 39巻1号. 335-350 (1990)
• [文献書誌] 大江 泰一郎: "ペレストロイカの所有法" 法律時報. 62巻8号. 76-85 (1990)
• [文献書誌] 大江 泰一郎: "ペレストロイカの新企業法" 法律時報. 62巻10号. 42-53 (1990)
• [文献書誌] 大江 泰一郎: "社会的所有と「私有化」の論理" 法律時報. 62巻12号. 30-37 (1990)
• [文献書誌] 三木 義一: "西ドイツの土地保有税制" 日本不動産学会誌. 6巻3号. (1991)
• [文献書誌] 伊藤 恭彦・松田 竹男: "静岡県下民間国際交流団体の実態調査" 静岡大学『法経研究』. 40巻1号. (1991)
• [文献書誌] 坂本 重雄: "在日外国人に対する労災保険・社会保障の適用" 静岡大学『法経研究』. 40巻1号. (1991)
• [文献書誌] 名和 鉄郎・松田 竹男: "外国人の犯罪と刑事手続の諸問題" 静岡大学『法経研究』. 40巻1号. (1991)
• [文献書誌] 大江 泰一郎(小森田 秋夫,竹森 正孝と共訳): "岐路に立つペレストロイカ" 日本評論社, 358 (1990)
• [文献書誌] 松田 竹男: "大学の国際化と留学生" 静岡大学人文学部, 72 (1990)
• [文献書誌] 川口 美貴(本多 淳亮他14名と共著): "外国人労働者の人権" 大月書店, 265 (1990)