走査型LEED顕微鏡は一般の走査型電子顕微鏡では全く觀測できない表面の格子欠陷や單原子層ステップを、100Åの分解能で觀測できると共に、100Å領域のLEED図形がえられ、表面欠陷を定量的に解析することができる。また、トンネル顕微鏡(STM)は原子オ-ダ-の分解能で原子配列や欠陷を実空間で解析することができる。本研究の目的は両装置を一体化し、同じ視野を10^3〜10^7の広い倍率で連続的に觀察し、実空間で格子欠陷や再配列構造の成因やその表面物性への影響を解析しようとするものである。 本年度は次のような成果をあげることができた。(1)いままで、超高眞空で動作できなかったSTMを10^<-10>Torrの超高真空下で、原子像が觀測できるようになった。(2)UHV-STMを用いて、TiC(111)清浄表面にエピタキシャル成長したグラファイトを觀測したところ、7×7超周期構造が現れ、下地と30°回転している。この構造はLEEDによる結果と一致する。この超周期構造が表面電荷密度波によるものかどうかは、現在研究中である。このような新しい構造が発見された成果は、今後の研究を拡大する。(3)一方、走査型LEED顕微鏡ではMoS_2の表面に存在する転位網による表面欠陷を発見し、その原因を解析した。(4)Si(100)2x1と1x2のドメイン構造を走査型LEED顕微鏡で觀察し、その歪圧による影響をしらべた。また、この表面にエピタキシャル成長するCu粒子の異方性ある成長は、下地のダイマ-列と関係し、ダイマ-列に直角に成長し易いことを明らかにした。(5)STMと走査型LEED顕微鏡を同じ試料位置で連続的に觀測するために、両者の觀測位置を数10Åの精度で合せる機構を考案した。STMの針の走査をSEMで直接觀測して位置合せを行う。このための新しいSTMのユニットの設計を完了した。 以上の様に本年度は本研究について、輝かしい成果をうることができた。
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