研究概要 |
走査型LEED顕微鏡と走査型トンネル顕微鏡を用いて超高眞空中で固体表面の構造や格子欠陷を観察する研究が行われた。平成3年度は次のような研究実績をあげることができた。 (1)TiC(111)上の箪原子層グラファイトの電子状態の解析 TiC(111)上に成長した箪原子層グラファイトの電子状態をXPS,UPS,仕事関数の測定でしらべた。箪原子層グラファイトは下地と強く結合し,グラファイトやグラファイトのインタ-カ-レション化合物とは異った新しい電子状態をもつことを発見した。(Phys,Rev.B投稿中) (2)Pt/Si(001)の結晶成長初期過程のSTMによる研究 Pt/Si(001)系でPtが1/6〜1/3箪原子層の厚さで,C(4×6)及びC(4×2)の超周期構造をつくることをLEEDで発見し,この構造をSTMで決定した。C(4×2)はPtがSi(001)の第1層と第2層の間にC(4×2)の周期で埋まつて配列し,C(4×2)の一部のダイマ-は規則的に欠損し,C(4×6)の構造をもつことを明らかにした。(Phys.Rev,B.4月号1992) (3)Si(001)上の金属アイランドのエレクトロマイダレ-ション Si(001)上で金属アイランドは下地に流す電流によつてエレクトロマイグレ-ションすることを発見した。AuとAlでは電流に対するマイグレ-ションの方向が逆である。この駆動力の起源について本年度は研究した。駆動力はペルチエ効果による島の近傍での温度差が原因で,表面張力の差から島は高温側に移動することを明らかにした。(Phys,Rev.Lett1992) (4)Si(001)2原子層ステップのSTMによる構造解析 Si(001)はシングルからダブルドメインへの相転移があるとされている。我々はSTMによる2原子層ステップの構造解析から,この変化は相転移ではなく,2原子層ステップの不可逆的な温度による乱れから生ずる拡散現象であることを明らかにした。(Surf,Sci投稿中)
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