界面活性剤を用いた人工膜系で、最も安定した自励振動を示す系は水・油の界面であるが、その振動について、從来から知られていた10分程度の長周期をもつ自励振動の他に、7〜8秒を周期とする短周期の自励振動を新たに見出した。この短周期の振動は長周期の振動に重疊して観測されるところから、両者は独立な現象と考えられる。また長周期の振動は、これと同期して界面付近に起こる一過性の乱流を伴っていることを見出した。すなわち、油の上にある界面活性剤水溶液は最初界面付近でロ-ル状の対流運動を起こし、それが段々強くなって速度がある閾値を起すと、突如として界面が乱れて油と水が混り合い、また元の靜止状態に戻る。そしてこれに呼応して電位パルスが発生していることが分かった。このロ-ル状の対流運動はマランゴニ-対流(界面における界面活性剤の濃度勾配に伴う界面張力の勾配によって惹き起こされる運動)であると思われるが、これが何故流速を増して一過性の乱流状態を生みだすのか、その機構の詳細は今のところ不明である。 さらにこれとは別に、ニュ-クリポア・フィルタ-にソルビタン・セスキオレエ-トを含浸させた人工膜について、これを両側が同じ濃度のKCl水溶液に漬けたときのコンダクタンスの溶液濃度依存性を測定すると共に、他方これを濃度の違うKCl水容液で挾み、一定のパルス刺激電流を加えたときの興奮電位強度の温度依存性を測定し、温度の低い方が大きな興奮電位強度を示すことを見出した。これらの結果は界面における界面活性剤イオンの自己蝕媒的なCl^ーイオン取り込み反応のモデルによって説明できることを示した。
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