炭素繊維などで強化された複合材料の積層板が、一様な面内荷重や曲げモーメントなどの力学的荷重、または、一様な温度上昇や吸湿に起因する初期歪による荷重を受ける場合、自由縁近傍やトランスバース・クラック近傍に層間応力が発生する。そしてこの層間応力が、複合材料積層板の破壊の主要モードである層間剥離を引き起こす。本研究は、この層間応力による変形の理論解析を行うと共に、レーザ・ホログラフィ干渉法によって面外変形を計測し、層間応力および層間剥離の発生機構を解明するのが目的である。 理論解析においては、自由縁方向またはトランスバース・クラック方向には応力分布は変化しないとすることにより、準三次元問題に変換して、有限要素法によって計算を行った。また、自由縁問題やトランスバース・クラック問題を、無限板の問題と自由縁またはトランスバース・クラック表面に荷重を加える問題とに置き換える重ね合せ法を提案し、それらの変換された自由縁問題およびトランスバース・クラック問題を、有限要素法によって解析した。この変換により、層間応力の影響による変形のみを抽出することが可能となった。 実験においては、短冊型の炭素繊維複合材料(CFRP)積層板に曲げ荷重または引張荷重を負荷し、積層板表面の面外変形をレーザ・ホログラフィ干渉法によって計測した。このとき、繰り返し引張荷重を加えることによって自由縁に層間剥離を発生させた積層板についても、実験を行った。曲げ荷重による変形は、無限板に対する理論値とよく一致したが、自由縁の影響による変形は、その変形量が全体の曲げ変形に比べて小さいために、確認できなかった。引張荷重を作用させたときの自由縁の影響による変形は、層間剥離が存在する場合には、理論解析での予想された変形を確認することができた。
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