研究概要 |
本年度はパルスウォ-タ-ジェットの高速衝突による壁面損傷に関する実験を通して,液体の高速衝突と材料のかい食機構との関わりについて検討を行った。昨年まで行ってきたサボ方式の液滴高速衝突の原理とは異り,本年度は火薬駆動のガス銃で発射されるプラスチック弾丸を,ノズル内に停留させた微小水塊を分離しているネオプレンゴムに衝突させ,その際の衝撃によって3000m/sを超えるプリカ-サ-を伴うパルスウォ-タ-ジェットを生成させた。このモンロ-ジェットは,ノズル出口で凹面形状の水面に衝撃波が作用することによって形成されるものであり,Shaped Charge,ウルトラ・ジェットあるいは気泡に衝撃波が作用する結果生じる高速微小噴流の生成機構と本質的に類似しているものと考えられる。この種のパルスジェットがアクリル壁に衝突することによって,固体内に生じるき裂の進展状況が明瞭に観察できた。また,タ-ゲットがアルミニウムの場合には,液体ジェットの構造に対応する傷痕が忠実に試片表面に現われ,過去に提示された知見が,条件的に限定された結果であることが明らかになった。本実験の範囲において,損傷面積の広がりはノズル出口速度,あるいはパルスシェットの壁面衝突速度には依存しておらず,スタンド・オフ距離に対応するジェットの広がりに比例すること,これに対して中央ピットはジェット速度に比例してその径が増大していることが明らかとなった。また,クレ-タ-の大きさはジェットの運動エネルギ-の増大に伴って広がる傾向にあること,さらには水滴の高速衝突に起因すると思われる多数のミクロな損傷ピットの存在を確認した。以上の成果を,今年度日本機械学会(4月,8月)および日本ウォ-タ-ジェット学会(7月)が開催する講演会において発表する予定である。
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