研究概要 |
今年度の研究実施計画は、1.関東平野とその周辺地域におけるやや長周期地震動の群列観測網の改良 2.関東平野における地下深部探査と解析地盤モデルの確立 の2項目であった。1については、従来の観測点のうち2〜3点を、現在多数の長大構造物が計画或いは建設されつつある東京湾沿岸(の埋立地)に移設することを計画し、いくつかの機関に地震計設置の依頼を行った。現時点では、「否」の正式回答ばかりであるが、横浜市が依頼に沿う方向で検討を進めてくれている。今年度中に移設は完了しないかも知れないが、来年度も引続き観測網の改良を継続することにしている。従って、地震観測は前年度に整備した観測網で継続している。今年度観測された主な地震としては、1990年6月5日の神奈川県中部の地震(M5.4,深さ123km)や同8月5日の箱根付近の地震(M5.1,深さ14km)などがあるが、何れも対象としているやや長周期地震動はそれほど顕著にはみとめられなかった。2については、1989年12月に埼玉県において実施された人工地震による地下深部探査のための発破実験結果を解析し、熊谷周辺の深い地下構造の検討を行った。その結果、この地域の地下構造は東京都心部に比べ、第1層(P波速度1.8km/s)が極めて薄いこと、基盤層のP波速度が大きく(東京・神奈川地域では5.5km/s程度であるのに対し約6.2km/sである)しかもその上面は凹凸が激しいことが明らかとなった。一方、長周期微動を用いたやや浅部の地盤を対象とした地下探査はその手法の妥当性が得られたことから、地震観測点付近の深さ1〜2kmの地盤の探査を行い、発破実験による地下深部探査結果とを併せて解析地盤モデルの検討を進めている。なお、やや長周期地震動が顕著であった昨年2月20日の伊豆大島近海の地震(M6.5,深さ6km)や長野県西部地震について検討を行った結果、震源から関東平野端部までの伝播経路の地下構造もやや長周期地震動の発生にかなり関与していることが知れた。
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