研究概要 |
今年度の研究実施計画の、「1.関東平野とその周辺地域におけるやや長周期地振動の群列観測網の改良」については、熊谷地域の3観測点を除いて全て広ダイナミックレンジのディジタル遅延記録と成り、50kine(一部の観測点については20kine)までの地震動はスケ-ルアウトすることなく収録できる観測網が整備された。ただ、停電時の対策(バッテリ-などによる短時間のバックアップ)が半数以上の観測点で成されていないので、今後の改良課題である。今年度観測された地震としては、1991年9月3日の東海道はるか沖の地震(M6.3,深さ33km)や1992年2月2日の浦賀水道の地震(M5.9,深さ93km)がある。地震動としては浦賀水道の地震の際のものが最も大きな地震動であり、大船を除く観測点で良好な記録が得られたが、やや長周期地震動は東海道はるか沖の地震によるものの方が顕著であり、長周期構造物の耐震安全性の観点からは、震央距離は多少大きくとも規模の大きな浅井地震に依る地震動に関心を払うべきことが再確認された。なお、地震記録のデ-タベ-ス化については、建築学会及び震災予防協会の関連委員会に協力し、デ-タの提供を開始している。 「2.震源特性と地下構造を考慮したやや長周期地震動の特性評価手法の開発」については、伊豆大島近海などの浅い地震に依る観測地震動の特性評価と並行して、同手法を応用して規模の大きな地震による地震動の予測や、比較的深いが震央距離が小さい地震(いわゆる直下型地震)によるやや長周期地震動の特性評価なども試みている。また、熊谷地方気象台の観測記象でS波主要動の約1分後に現われるやや長周期の後続位相について、その伝播経路のシミュレ-ションを行ない、震源(熊谷から観て西方に限る)から前橋付近に伝播してきた地震波(表面波)が、両側を山地に挟まれたこの地域の狭く深い堆積層内に閉じ込められて起こる現象として説明できた。
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