シンクロトロン放射光による超励起分子の生成・消滅過程の研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01430001
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 籏野 嘉彦 東京工業大学, 理学部, 教授 (90016121)
• 研究分担者: 田中 健一郎 高エネルギー物理学研究所, 放射光実験施設, 助教授 (90106162) ; 亀田 幸成 東京工業大学, 理学部, 教務職員 (90214551) ; 鵜飼 正敏 東京工業大学, 理学部, 助手 (80192508) ; 河内 宣之 東京工業大学, 理学部, 助教授 (50161873)
• キーワード: シンクロトロン放射光 / 超励起分子 / 解離過程 / 自動イオン化過程 / 真空紫外分光器 / 同時計数系 / 光電子検出 / 発光測定

研究概要

分子超励起状態の存在とその性質について本研究代表者らは放射線化学反応の実験によりはじめて実証し、その後、電子衝撃実験によりその概要を明らかにしてきた。また最近ではシンクロトロン放射光を用いた実験により分子超励起状態の研究が国際的な競争となりつつある。本研究ではこのような背景から、シンクロトロン放射光の諸性質を駆使し世界に先駆けて超励起分子の生成・消滅過程の詳細を明らかにすることを目的とし、以前の予備的な研究において種々試作した装置を規格化・整備するとともにこれらを用いた実験によりデ-タの取得を行うことを計画した。具体的にはA)排気系つき真空槽の製作、B)発光の同時計数系の整備充実、C)超励起分子の解離フラグメントからの発光分光装置の製作、D)超励起分子の自動イオン化により生じた電子を検出する系の製作を中心とするものであった。このうち平成二年度は平成元年度に計画を若干修正して、A)の真空槽とC)の分光器とを一体型装置として作製した、排気系ならびに真空槽付きの真空紫外分光器の立ち上げと調整とを行い装置として確立し、予備的なデ-タを取得している。また、これをと並行して、平成元年度に整備したB)の同時計数系を用いて筑波・高エ研フォトン・ファクトリ-において、水素分子超励起状態の解離断片からの発光寿命測定を行い、解離水素原子の軌道角運動量分布の測定を行った。さらに、D)の電子検出に関しては、磁場を用いた積分型光電子分光器の設計・製作を行った。以上を高エ研での共同利用実験に使用し、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素ならびにIV属水素化合物等の光吸収断面積の絶対測定、イオン化の部分断面積と解離(発光)断面積の測定を行い電子線衝撃の結果と比較を通じて超励起状態の生成・消滅過程についての詳細かつ幅広い知見を得ることができた。
以上今年度の研究計画はほぼ計画通り遂行された。

研究成果

• [文献書誌] 籏野 嘉彦: "“1989環太平洋国際化学会議(PACIFICHEM'89)シンポジウム「シンクロトロン放射光の化学への応用」の報告"" 放射光. 3. 326-327 (1990)
• [文献書誌] 籏野 嘉彦: "“シンクロトロン放射光"" 放射線化学. 50. 40-45 (1990)
• [文献書誌] K.Kameta: "Absolute measurements of photoabsorption and photoionization cross cross sections of disilane in the EUV region." Proceedings of the 8th symposium on PLASMA PROCESSING.(1991,Nagoya). 337-340 (1991)
• [文献書誌] K.Ueda: "Threshold behavior of the multiplyーchargedーphotoion yields near the Ar Kーedge." J.Phys.,. B24. (1991)
• [文献書誌] M.Ukai: "The role of shape resonance in ionizing and nonーionizing decays of superexcited C_2H_2 in EUV region." Photon Factory Activity Report 1990.(Natnl.Lab.High Energy Phys.). (1991)
• [文献書誌] K.Kameta: "Absolute measurements of photoabsorption cross sections,photoionization cross sections,and photoionization quantum yields of silane and disilane in the 13ー22 eV region." Photon Factory Activity Report 1990.(Natnl.Lab.High Energy Phys.). (1991)
• [文献書誌] M.Ukai: "Fluorescence excitation spectra excited by photodissociation and photoionization of CO_2." Photon Factory Activity Report 1990.(Natnl.Lab.High Energy Phys.). (1991)
• [文献書誌] N.Kouchi: "Angular momentum distribution measurement of excited hydrogen atoms produced in the photoionization of H_2 by means of single bunch operation of PF ring." Phton Factory Activity Report 1990.(Natnl.Lab.High Energy Phys.). (1991)
• [文献書誌] M.Ukai: "Ionizing and nonーionizing decays of superexcited acetylene molecules in the extremeーUV region." J.Chem.Phys.
• [文献書誌] K.Kameta: "Absolute measurements of photoabsorption cross sections,photoionization cross sections,and photoionization quantum yields of silane in the 13ー40 eV region." J.Chem.Phys.