研究概要 |
光電子分光法には、表面より放出された光電子をあらゆる立体角で集め検出する角度積分型と微小立体角中にのみ放出される電子を検出する角度分解型と呼ばれるものがある。前者は放出される光電子の並進エネルギ-を測定することにより界面原子層の電子状態についての情報を与える。一方、後者は表面の角度θを変化させながら微小立体角中の光電子を測定して深さの情報も与える。本年度は、トリメチルインジウム(TMIn)をGaAs基板の上に低温(170K)で飽和吸着させ、その後700Kまで温度を上げ、熱による表面吸着単分子層の状態変化を光電子スペクトルにより観測した。角度θ=75°,45°のそれぞれで観測を行った。 基板温度を上昇させると、炭素原子(C)とインジウム原子(In)のピ-ク強度は減少し、その比率も変化する。170Kでは[C]/[In]比が2に近いことから基板上ですでに分解吸着していることがわかる。さらに基板温度を500Kまであげるにつれて、その比率が減少してゆくのはCがGaAs基板上から脱離してゆくことを示している。これ以上に基板温度をあげた時その比率が上昇するのはIn原子が脱離し、表面濃度が減少するからであろう。角度θを小さくして測定した結果、[C]/[In]の比率が増加しているのはCが表面に残っているからと考えられた。また紫外レ-ザ-光(193nm)をSi(111)面(温度=200K)に吸着したTMInに照射した結果、紫外光照射によりIn原子が界面に生成してくるのがピ-クのシフトから確認できた。成分比[In]/[Si],[C]/[Si]はθ=40°で測定すると、照射前0.11,0.23であったが、照射後は0.10,0.15となりC原子の減少がみられた。これは光解離により表面より脱離していったことを示す。
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