研究概要 |
平成元年度に組み上げた1064nm光励起フ-リエ変換ラマン分光システムを用いて,導電性高分子と光合成細菌の研究を行った。 (1)導電性高分子 ナトリウムをド-プしたポリパラフェニレンビニレンのスペクトルを測定した。オリゴマ-のラジカルアニオンとジアニオンのスペクトルから,得られたスペクトルは繰り返し単位で3程度に局在したバイポ-ラロンであることがわかった。また,ド-プ量が少ない場合も多い場合もバイポ-ラロンが存在しており,これまでド-ピング過程の定説となっていたド-ピング機構,すなわちド-プ量が少ないとポ-ラロンが生成し,多いとバイポ-ラロンになるという説が成り立たないことがわかった。ナトリウムをド-プしたポリアセチレンに関しては,ド-プ量依存性を測定した。ド-パント濃度の増加につれ,電導度の急激な増加とパウリ常磁性の出現が観測されるが,これらに伴う二段階のスペクトル変化が観測された。今後,オリゴマ-に基づくスペクトルの帰属が必要である。ヨウ素を多量にド-プしたポリアセチレンでは,合成法すなわち電導度の違いによりラマンスペクトルに違いが観測された。 (2)光合成細菌 光合成細菌Rhodobacter sphaeroides blueーgreen mutantの膜標品のスペクトルを測定した。膜標品には,脂質やタンパク質,色素などが含まれているが,観測されたバンドはすべてバクテリオクロロフィルa(BChl)に帰属された。BChlは870nm付近に吸収をもつので,前期共鳴効果によりBChlのみが観測されたと解釈される。1490〜1520cm^<-1>領域のバンド(環のCC伸縮)から中心金属であるマグネシウムは5配位であることがわかった。また,カルボニル基のCO伸縮バンドの波数から,すべてのCOは水素結合をしていることがわかった。
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