遷移金属イオンおよび金属錯体の集合化に伴う化学的効果

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01430009
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 伊藤 翼 東北大学, 理学部, 教授 (90007328)
• 研究分担者: 永澤 明 埼玉大学, 理学部, 助手 (40108452) ; 木戸 寛明 東北大学, 理学部, 助手 (40004444) ; 佐々木 陽一 東北大学, 理学部, 助教授 (30004500)
• キーワード: 金属核 / ニオブ-93ーNMR / 多核金属錯体 / 位置選択的反応性 / 金属クラスタ-錯体 / 多彩な酸化還元挙動 / 高分子錯体

研究概要

1.NMR活性な金属核を含む多核金属錯体
主として、金属間結合をもち、酸化数の異なる種々の^<93>Nb核NMRを測定した。低酸化数の錯体ほど、即ち、金属間結合が強いほど、シグナルが低磁場に現れることなど、新しい知見を得た。このほか、Ptの二核および四核錯体、Mo、Wの二核錯体、Nbの単核錯体についても、金属核NMRを測定し、新しい有用な知見を得た。
2.カルボン酸架橋多核金属錯体およびその架橋による多重体系
(1)Pt4核、Ru3核、Cr3核、,Ru_2M型混合金属3核(M=Cr、Ni)など、新しいカルボン酸架橋多核錯体約20種を合成し、分子構造、酸化還元挙動、置換反応性など化学的諸性質を明らかにした。〔Pt_4(OAc)_8〕については正方形型のPt4核クラスタ-骨格の面内配位座が顕著な位置選択的反応性を示すことを見出し、電子構造の現論的研究および速度論的研究を行った。多彩な酸化還元挙動を示す多核錯体として,2種類の新しいRu3核錯体を合成することに成功した。アミノ酸を架橋配位子とする新しいCr3核錯体を4種合成した。今後、不斉認識の研究への応用が期待される。
(2)Ru3核錯体について、ピラジンを架橋配位子とする多量体の合成を行った。新しい2種の2量体は、母体の3核モノマ-よりも更に複雑多彩な酸化還元挙動を示すことがわかった。また、重合度の高い配位高分子錯体も得られたが、重合度の異なる混合物であった。
3.有機高分子膜に分散させた錯体集合系
PVP高分子膜にZn(TPP)を分散させた系について、光電導度の錯体間距離依存性および温度依存性について調べた。また、PVPに上記Ru3核錯体を分散させた新しい高分子錯体の合成にも成功した。この膜は、ある条件下では、興味深い修飾電極挙動を示すことがわかった。

研究成果

• [文献書誌] S.Ikari: "(muーEthylenediaminetetraacetato)(muーoxo)(muーsulfido)bis(oxotungstate(V):The First Crystallographically Characterized Complex Containing the W_2(O)_2(muーO)(muーS)Unit" Inorganic Chemistry. 28. 447-451 (1989)
• [文献書誌] K.Nakata: "Redox Properties of a Series of Iron(III)Trinuclear Carboxylates,[Fe_3(mu_3ーO)(muーRCO_2)_6(L)_3]^<n+>" Chemistry Letters. 753-756 (1989)
• [文献書誌] S.Ikari: "A New Mixed MolybdenumーTungsten Dinuclear Complex,Bis(muーoxo)(muーethylenediaminetetraacetatoーN,N')oxomolybdenum(V)oxotungstate(V)" Inorganic Chemistry. 28. 1248-1254 (1989)
• [文献書誌] S.Jin: "Structure of a LinearーChain ChloroーBridged Binuclear Platinum Complex,(NH_4)_4[Pt_2Cl(P_2O_5H_2)_4]" Acta Crystallographica. c45. 1415-1417 (1989)
• [文献書誌] T.Yamaguchi: "Facile Regioselective Ligand Substitution for the InーPlane Bridging Acetates in Octakis(muーacetatoーO,O')tetraplatinum(II)" Inorganic Chemistry. 28. 4311-4312 (1989)
• [文献書誌] S.Ikari: "Asymmetric Distortion of bis(muーoxo)bis(oxotungstate(V))Complexes.Crystal Structure of Bis(muーoxo)(muーN,N'ー(R)ーpropylenediaminetetaacetato)bis(oxotungstate(V))" Inorganic Chemistry. 29. 53-56 (1990)
• [文献書誌] T.Yamaguchi: "Unusual C,OーBridging Coordination of Acetate and Acetylacetonate Ligands in the Platinum Clusters,[Pt^<III>_2(muーCH_2COOーC,O)_2(muーCH_3COOーO,O')_2Cl_2]^<2-> and Pt^<II>_4(muーCH_3COOーO,O')_4(muーCH_3COCHCOCH_3ーO,C^3)_4." Journal of The American Chemical Society.
• [文献書誌] Y.Sasaki: "Mixed Chromium(III)ーRuthenium(III)Trinuclear Complex,[CrRu_2(muーO)(muーCH_3COO)_6(pyridine)_3]^+" Chemistry Letters.