研究概要 |
1.同位体地球化学的研究成果:「本印新第三紀グリンタフ地域に分布する黒鉱鉱床と石油鉱床は共通の有機堆積物PUMOS(Primitive Unditterentiated Metalliferous Organic Sediment)を起源としている」とする代表者の仮説を検証すべく、以下の研究を行った。 (1)ストロンチウム同位体比較研究:原油中の微量のストロンチウムの同位体比分析に成功し、石油鉱床の^<87>Sγ/^<86>Sγガ黒鉱鉱床の初期値と一致していることを発見した。この知見は、既に得られている硫黄同位体的類似性(Kajiwara and Sasai,1987)と共に、PUMOS仮説を支持する有力な地球化学的証拠となる(Nakano,Kajiwara and Farrell,1989). (2)硫黄同位体システマティクス:鉱床硫化物硫黄(MOS:Major Ore Sulfides)及び負岩硫化物硫黄(NSS:Normal Sedimentary Salfides)の^<34>S/^<32>Sデ-タを総括し、海水硫酸硫黄に対する見かけの同位体分別係数を統計的に検討した。その結果、MOSの平均的分別係数はバクテリア硫酸環元過程の同位体効果と一致しており、NSSの分別係数はMOSのそれの凡そ2倍となっていることが判明した。この事実は、MOSとNSSの同位体分化が堆積盆の酸化環元条件及びそれに呼応した微生物生態系の相違に起因していること、及び、鉱床の形成が海洋の無酸素化事変(Ocean Anoxic Event)と本質的に関係していること、を強く示唆している(Kajiwara,1989)。 2.元素地球化学的研究成果:堆積地質系における鉱床元素の地球化学的挙動を明らかにするため以下の研究を行った。 (1)日本海表層堆積物の地球化学的研究(Yin,Kajiwara and Fujii,1990) (2)海成堆積物と鉱床の比較地球化学的研究(梶原・殷・藤井、1990) 得られた結果は、鉱床タイプの分化が堆積地質系における生物源沈降粒子束の続成的酸化還元分別作用に起因していることを示唆しており、今後のプロジェクト逐行上の重要な指導原理となり得るものである。
|