研究概要 |
1.鉱床の比較地球化学的研究:PUMOS尺度で規準化した遷移元素組成比パタ-ンのシステマティクスを行い,以下の結論を得た。 1)黒鉱鉱床とマンガン団塊の組成比パタ-ンは見事な幾何学的対称性を示す.同様の対称性は黒鉱分布地域の遷元性泥質岩と外洋の酸化性堆積物との間にも成立している.両鉱床タイプはまさにPUMOS(定常海洋循環フラックス)の共役的な酸化遷元分化産物であり,共に海洋による地球規模のシステムコントロ-ルを受けていることを証拠づけている. 2)本邦中古生界に広く分布している別子型硫化鉄鉱床と層状マンガン鉱床の間にも別次元の対称性が認められる.これらもまた共通のシステムコントロ-ルのもとで生成した共役的分化産物であるとみなせる.前者の組成比は日本海沖に分布する弱酸化性褐色泥中の酸化物フラクションのそれと同一であり,後者の組成比は北欧フィヨルドの貧酸素水系に産するプランボイダル黄鉄鉱のそれに酷似している.本邦中古生界の層準規制型鉱化作用は,冷い海溝盆に生起したoceanic anoxiaの産物であるかも知れない. 2.花崗岩系列の比較地球化学的研究:本邦の基盤をなす磁鉄鉱系列花崗岩類ーチタン鉄鉱系列花崗岩類の同位体地球化学的性質を比較検討した結果,両花崗岩系列はそれぞれグリンタフ地域の金属鉱床帯(火山岩卓越地域)と石油鉱床帯(堆積岩卓越地域)の性質に対比し得ることが明らかとなった.花崗岩マグマの起源には表層環境での地球化学過程を経た地殻物質が本質的に関わっているらしい. 3.北海道K/T境界の地球化学的研究:同K/T境界において突然かつ顕著な硫黄同位体比異常の存在を発見した.これは当時の海洋にanoxiaが発生したことを示す直接的証拠となろう.(目下研究継続中)
|