研究概要 |
1.黒鉱ー石油同源説の検証:本邦グリンタフ地域に帯状対分布している黒鉱生成区と石油生成区を対象として同位体地球化学的比較研究を行い,両鉱床区が ^<34>S/^<32>Sおよび ^<87>Sr/^<86>Srに関して区別し得ない性格を有していることを明らかにした。これは代表者が提唱しているPUMOS理論(黒鉱ー石油同源説)を支持する積極的証拠である。 2.鉱床硫黄と夏岩硫黄の同位体分化要因:海水硫酸硫黄に対する鉱床硫化関硫黄を夏岩硫化物硫黄のみかけの ^<34>/^<32>S分別係数はバイモ-ダル分布を示す。このような同位体分化は,微生物生態系と密接に関係しており,鉱床硫黄は酸化バクテリアの存在しない嫌気的堆積環境で、夏岩硫黄はそれが卓越する好気的堆積環境で,生成したらしい。 3.日本海表層堆積物の遷移元素分布:GHー86ー2航海で得た山陰沖表層堆積物について全岩及び抽出性成分の分析を行い,遷数元素(Mu・Fe・Cu・Ni・Co・Zn・V・Cr)含量の水深依在性および1000m以深に分布する弱酸化性褐色泥薄層の形成機構を明らかにした。 4.鉱床遷元素組成のシステマティクス:PUMO尺度(定常海洋循環フラックス)に基いて,代表的鉱床タイプ(マンガン団塊・黒鉱・別子型キ-スラ-ガ・層状マンガン等)相互間の元素分別様式を定量的に把握し,それらが海成堆積物系に含まれている微量鉱石成分の酸化還元分別様式と等価であることを見出した。これにより、鉱床形成にはオ-シャンフラックスが本質的寄与をしていることが実証された。 5.花崗岩起源論の再検討:磁鉄鉱床列ーチタン鉄鉱系列花崗岩類の同位体地球化学的比較研究を行い,これらが過去の火山地質帯ー堆積地質帯の化石である可能性を指摘した。 6.K/T境界の地球化学:北道海のK/T境界で突然かつ顕著な ^<34>S/^<32>S同位体比異常を見出した。“ocean anoxia"発生の決定的証拠となろう。
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