研究概要 |
本研究代表者らは先に、結晶化ガラスAーWと骨の界面反応を、それと擬似体液の界面反応と比較することにより、セラミックスが生体の骨と結合するための条件は、生体内でその表面に骨類似のアパタイト層を形成することであり、セラミックスが生体の骨と結合するか否かは、そのセラミックス表面にアパタイト層が形成されるか否かを擬似体液中で調べることにより予測できると結論した。 そこで本研究では、単純なCaOーSiO_2ーP_2O_5及びCaOーSiO_2ーAl_2O_3の二つの系について、種々の組成のガラスを調製し、その10×15×1mmの大きさの板状試料を無機イオン濃度だけをヒトの血漿のそれにほぼ等しくした(Na^+142.0,K^+5.0,Ca^<2+>2.5,Mg^<2+>1.5,Cl^-147.8,HCO_3^-4.2,HPO_4^<2->1.0,SO_4^<2->0.5mM),pH7.25,温度36.5℃の水溶液に浸漬し、7,20及び30日後にその表面の構造変化を、薄膜X線回析、フ-リエ変換赤外反射分光法及び走査電子顕鏡観察により調べ、体液環境下におけるガラス表面でのアパタイト層形成能、すなわち生体活性がガラス組成によってどのように変化するかを基礎的に調べた。その結果、CaOーSiO_2P_2O_5系においては、CaO30〜70,SiO_230〜70,P_2O_50〜10mol%の組成域内において30日以内にガラス表面にアパタイト層が形成されるが、CaOーP_2O_5及びCaOーSiO_2ーP_2O_5系のP_2O_5を40mol%以上含む組成域においては30日後にもガラス表面にアパタイト層が形成されないこと、一方CaOーSiO_2ーAl_2O_3系においては、CaO30〜70,SiO_230〜70,Al_2O_30〜1.5mol%の組成域内において30日以内にガラス表面にアパタイト層が形成されるが、それ以上Al_2O_3を含む組成域においては30日後にもアパタイト層が形成されないことが明らかになった。これらの結果は、ガラス中のCaOとSiO_2がその表面でのアパタイト層の形成に主要な役割を果していることを示している。
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