1.研究目的:無機質固体の中には、生体内で自然に骨と結合するものがあり、生体活性材料と呼ばれる。それらのいくつかのものは、すでに有用な骨修復材料として実用化されているが、それらの骨と結合機構については不明な点が多い。いくつかのものは生体内でその表面にCaとPに富む層を作ってそれを介して骨と結合することが知られているが、他の材料も同様なのか、CaとPに富む層はアパタイト層なのか、アパタイト層ならどのようにして形されるかなどは明らでない。本研究は、これらの点を追究するこによって、無機質固体の生体活性を支配す因子を明らかにすることを目的とする。 2.研究成果:(1)アパタイトだけを結晶相として含む結晶化ガラスCeravital〓も、生体内でその表面にCaとPに富む層を形成し、それを介して骨と結合することが確かめられた。(2)結晶化ガラスAーWと羊の骨の界面に生成したCaとPに富む層は、実際にアパタイト層であることが、徴小部X線回折によって確かめられた。(3)結晶化ガラスAーWと擬似体液との界面反応を調べることによって、結晶化ガラスから溶出するCa(II)とSi(IV)イオンが体液中のP(V)イオンと反応することによって結晶化ガラス表面にアパタイトの核を形成し、その核が液中のCa(II)とP(V)イオンを使って成長することによってアパタイト層が形成されることが明らかになった。(4)CaoSio_2ーP_2O_5系及びCaOーSio_2ーAl_2O_3系ガラスと擬似体液の界面反応を調べることによって、ガラスから溶出するCa(II)イオンが体液のアパタイトに対する過飽和度を上昇させ、Si(IV)イオンがアパタイトの核形成を誘起する結果、CaOとSiO_2を主成分とするガラスの表面にだけアパタイト層が形成されることが明らかになった。
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