研究概要 |
パラジウム錯体を触媒としてジシランと各種のイソニトリルの反応を、まず詳細に調べ、芳香族イソニトリル、特に、2,6ー位にアルキル置換基のあるフェニルイソニトリルが安定なビス(シリル)Nーアリ-ルイミンを与えることを見出した。次に、テトラシランおよびヘキサシランと2,6ージメチルフェニルイソニトリルの反応を酢酸パラジウム(II)触媒を用いて検討した。過剰量の2,6ージメチルフェニルイソニトリルを反応させることによりポリシランのすべてのケイ素ーケイ素結合に規則正しく一分子のイソニトリルが挿入したポリ〔シラNー(2,6ージメチルフェニル)イミン〕を得ることが出来た。いずれも黄燈色の結晶で、n→π^*に帰属される吸収を405nmに示した。テトラシランと2,6ージメチルフェニルイソニトリルから得られる結晶についてはX線結晶解析により構造の確認を行った。立体的にかさ高い2,6ーフェニル基の立体障害を避けるためポリ〔シラNー(2,6ージメチルフェニル)イミン〕の主鎖はねじれた骨格となっていることが明らかになった。また、使用する2,6ージメチルフェニルイソニトリルを制限して反応させた場合、2,6ージメチルフェニルイソニトリルはポリシランの末端ケイ素ーケイ素結合から優先して挿入反応が起り、つづいてイソニトリルを反応させると内部のケイ素ーケイ素結合にイソニトリルが挿入することが明らかになった。 ヘキサシラン以上の高分子量ポリシランを芳香族イソニトリルの反応では現在まで相当するポリ〔シラNー(2,6ージメチルフェニル)イミン〕の単離に成功していない。高分子量ポリシランになるにつれてパラジウムの錯体の存在下、ケイ素ーケイ素鎖の切断による副反応が問題を起すためであり、今後の課題である。
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