低分子量から高分子量領域にわたる高分子希薄溶液物性に関する研究(らせんみみずモデル仮説の検証)

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01430018
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 山川 裕巳 京都大学, 工学部, 教授 (80025874)
• 研究分担者: 林 久夫 京都大学, 工学部, 助手 (10115917) ; 栄永 義之 京都大学, 工学部, 助教授 (70028257)
• キーワード: らせんみみずモデル / 平均二乗回転半径 / 散乱関数 / X線小角散乱 / 光散乱 / 固有粘度 / ポリスチレン / ポリメタクリル酸メチル

研究概要

今年度の研究経過および得られた成果を以下に列記する。
1.ラセモダイアドの分率f_rが0.59のアタクチックポリスチレン(aーPS)について、重量平均分子量Mwが578から9.73×10^4の範囲でX線小角散乱(SAXS)測定により平均二乗回転半径〈S^2〉を決定した。その結果はすでに得ている平均二乗光学異方性〈γ^2〉固有粘度[η]と合わせて、らせんみみず(HW)鎖理論で統一的に説明でき、得られたHWモデル定数から希薄溶液中のaーPS鎖の形態を明らかにすることができた。
2.frが0.79のポリメタクリル酸メチル(aーPMMA)について、Mwが402から2.83×10^6の広い範囲でSAXSおよび光散乱測定より〈S^2〉を決定した。この結果もHW理論により定量的によく記述できる。得られたHWモデル定数より、aーPMMA鎖はaーPS鎖に比べて固くかつ大きくわん曲した局所形態をとっており、その結果Mwの大きい領域でaーPMMA鎖はaーPS鎖よりも小さな〈S^2〉をもつことがわかった。
3.SAXSで決定される散乱関数Ps(k)に対して、高分子鎖の中心線まわりの電子密度分布の影響を、HW鎖モデルに基づいて理論的に考察し、SAXSデ-タの解析に必要な理論式を導いた。この結果、散乱関数の形と電子密度分布の形(鎖の太さ)との関数が明らかになった。
4.1.と同じaーPSについてMw=1.48×10^3〜4.00×10^4でのPs(k)をSAXS測定より決定した。Kratkyプロットは散乱ベクトルkの大きい領域でもMwに依存し、また、従来の報告と異なりkの大きいところではkによらずほぼ一定になることがわかった。
ポリジメチルシロキサンしポリイソブチレンの分別精製による単分散試料の調製はほぼ完了した。今後これらの試料の〈S^2〉、[η]、並進拡散係数D等の測定を進めていく予定である。
購入した動的光散乱測定装置の調整をすでに完了し、Dの測定に着手した。FabryーPerot干渉計については現在調整中で、完了次第、2.と同じaーPMMAに対する〈γ^2〉の測定を行う予定である。

研究成果

• [文献書誌] Toshiki Konishi,Takenao Yoshizaki,Toshiya Saito,Yoshiyuki Einaga,and Hiromi Yamakawa: "Mean-Square Radius of Gyration of Oligo-and Polystyrenes in Dilute Solutions" Macromolecules. 23. 290-297 (1990)
• [文献書誌] Yoshinori Tamai,Toshiki Konishi,Yoshiyuki Einaga,Motoharu Fujii,and Hiromi Yamakawa: "Mean-Square Radius of Gyration of Oligo-and Poly(methyl methacrylate)s in Dilute Solutions" Macromolecules.
• [文献書誌] Kyosuke Nagasaka,Takenao Yoshizaki,Jiro Shimada,and Hiromi Yamakawa: "More on the Scattering Function of Helical Wormlike Chains" Macromolecules.
• [文献書誌] Hitoshi Koyama,Takenao Yoshizaki,Yoshiyuki Einaga,Hisao Hayashi,and Hiromi Yamakawa: "Scattering Function of Oligo-and Polystyrenes in Dilute Solutions" Macromolecules.