研究概要 |
今年度の研究経過および得られた成果を以下に列記する。 1.アタクチックポリスチレン,アタクチックポリメタクリル酸メチル,ポリイソブチレン(PIB),およびポリジメチルシロキサン(PDMS)の4つの代表的屈曲性高分子の高分子量試料について,Θ溶媒中における平均二乗回転半径〈S^2〉,並進拡散係数D,ならびに固有粘度[η]を測定した。これまで,〈S^2〉^<1/2>とDから評価される流体力学的半径R_Hの比ρ=〈S^2〉^<1/2>/R_H,ならびに[η]から評価される流体力学的モル体積V_Hと〈S^2〉^<3/2>の比Φ=V_H/〈S^2〉^<3/2>は,〈S^2〉と分子量Mの比〈S^2〉/Mが一定となる高分子量領域において,溶質高分子および溶媒の種類に依存しない普遍量であると考えられてきた。しかし,測定結果からρとΦの値を評価したところ,これらの量は普遍定数とはみなせないこと,特にPDMSの場合,〈S^2〉/Mが一定の高分子量領域においても,これらの値が分子量に依存することがわかった。PDMSについて観測されたこのような挙動は,いわゆる「素抜け効果」によるものと考えられるが,屈曲性高分子に対してこの効果が確認されたのは初めてのことである。[Macromolecules,24巻,5614頁(1991年)に掲載] 2.重量平均分子量M_wが162から1.83×10^5の範囲の18個のPDMS試料について,シクロヘキサン中25.0℃における平均二乗電気双極子能率〈μ^2〉を測定した。らせんみみず(HW)鎖理論に基づく測定結果の解析から,PDMS鎖はaーPMMA鎖同様局所的に湾曲した形態をとることが明らかになった。[Macromolecules,25巻,1487頁(1992年)に掲載] 3.2で用いたPDMS試料の大部分を含む,M_wが237から1.12×10^6の範囲の20個のPDMS試料について,ブロモシクロヘキサン中29.5℃(Θ溶媒)におけるDおよび[η]を測定した。[η]についてはメチルエチルケトン中20.0℃(Θ溶媒)における測定も行った。HW鎖理論に基づく測定結果の解析から,PDMS鎖は流体力学的に非常に細く,また従来考えられていたよりも固いことが明らかになった。(Macromoleculesに投稿予定)
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