高等植物における細胞周期に依存する遺伝子の転写発現制御の分子機構

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01440002
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 岩渕 雅樹 京都大学, 理学部, 教授 (30000839)
• 研究分担者: 中山 卓哉 北海道大学, 理学部, 助手 (30207948) ; 多羽田 哲也 京都大学, 理学部, 助手 (10183865)
• キーワード: コムギヒストンH3、H4遺伝子 / 転写発現制御 / シス制御エレメント / トランス制御因子 / DNA結合タンパク質

研究概要

細胞周期のS期に特異的に発現するヒストン遺伝子の転写制御機構を明らかにする目的をもって、主としてコムギH3及びH4遺伝子の転写調節に関わるシス制御エレメントとこれに働くトランス転写因子の解析を行ない、研究初年度は以下のような成果を得た。
1.シス調節エレメントの同定:H3及びH4遺伝子のシスエレメントとして推定されていたヘキサマ-配列とノナマ-配列について、これに点突然変異を導入し、その転写に与える影響をTiプラスミドベクタ-を介して導入したヒマワリ細胞において調べた結果、いずれも確実にシスエレメントであることが明らかとなった。また、両エレメントの間にあってこれまで効果がないとされていたオクタマ-配列も、この方法によってシスエレメントであることが証明された。
2.トランス転写因子の同定とそのタンパク質の一次構造:上記へキサマ-配列へ特異的に結合する2種の核タンパク質、HBPー1aとHBPー1bを同定した。これらについてはそのcDNAもクロ-ン化され、塩基配列も決定された。塩基配列より推定される両タンパク質のアミノ酸配列はいずれもDNA結合タンパク質のひとつの特徴であるロイシン・ジッパ-領域と塩基性アミノ酸に富む領域からなる構造を有していた。HBPー1aはこれらの構造をC末側に持っていたが、HBPー1bはN末側に持っていた。
3.HBPー1a遺伝子の一次構造:H3遺伝子の発現制御におけるHBPー1aの働きを知るため、この遺伝子をクロ-ン化しその塩基配列を決定した。それによると、コ-ド域は13ケのエクソンと12ケのイントロンから成る約2.1kbであった。特徴的なこととして、ロイシン・ジッパ-領域とDNA結合領域はそれぞれ独立した1つのエクソン単位となっていた。この遺伝子の5′上流の転写調節領域については現在解析中である。

研究成果

• [文献書誌] Mikami,Koji: "Multiplicity of the DNA-binding Protein HBP-1 specific to the conserved hexameric sequence ACGTCA in various plant gene promoters" FEBS Lett.256. 67-70 (1989)
• [文献書誌] Mikami,Koji: "Specific interaction of nuclear protein HBP-1 with the conserved hexameric sequence ACGTCA in the regulatory region of wheat histone genes" Plant Cell Physiol.30. 107-119 (1989)
• [文献書誌] Nakayama,Takuya: "Cis-acting sequences that modulate transcription of wheat histone H3 gene and 3′processing of H3 premature mRNA" Plant Cell Physiol. 30. 825-832 (1989)
• [文献書誌] Kawata,Takefumi: "Function of the hexameric sequence in the cauliflower mosaic virus 35S RNA promoter region" Biochem.Biophys.Res.Commun.164. 387-393 (1989)
• [文献書誌] Tabata,Tetsuya: "A protein that binds to a cis-acting element of wheat histone genes has a leucine zipper motif" Science. 245. 965-967 (1989)
• [文献書誌] Mikami,Koji: "Wheat unclear protein HBP-1 binds to the hexameric sequence in the promoter of various plant genes" Nucl.Acids Res.17. 9707-9717 (1989)