研究概要 |
高等植物における細胞周期のS期特異的転写調節機構を明らかにすべく,前年度に引き続き,コムギヒストンH3遺伝子の転写をモデル系として,シス制御エレメントとトランス転写因子の構造と機能について解析を行ない,以下のような成果をあげることができた。 1.S期特異性を規定するシスエレメント:これまでに同定した3つのシスエレメントを人為的に変えた遺伝子を導入したイネ形質転換細胞を作出し,これら転写パタ-ンを詳細に解析した結果,ヘキサマ-及びオクタマ-配列がS期特異性を規定するエレメントであることが明らかとなった。 2.ヘキサマ-特異転写因子HBPー1a及びー1bの機能:両因子の機能をそれぞれのcDNAを持ったエフエクタ-を作製し,これとH3/GUSをリポ-タ-とし,イネ培養細胞とタバコ培養細胞へ導入するトランジェント発現系を用いて解析した。その結果,両エフェクタ-はいづれも場合もネガティブに作用した。これについては,両因子に作用するコファクタ-を仮定することで解釈は可能であるので,さらにその因子を探索中である。 3.HBPー1a及びー1b遺伝子の発現と構造:ノ-ザン法による解析から,両因子自身の遺伝子とH3遺伝子の発現量がポジティブな相関関係にあることが明らかとなった。また,両因子の遺伝子のプロモ-タ-領域には,それぞれの因子が結合するモチ-フが存在し,実際に因子は結合した。このことから,両因子それぞれの遺伝子は個々の因子によって自己制御されていることが示唆された。 4.HBPー2の構造:3つのシスエレメントの中のひとつであるノナマ-配列に結合するHBPー2核タンパク質のcDNAがクロ-ン化され,その構造解析の結果から,この因子はZn・フィンガ-モチ-フを持つことが示され,転写制御因子である可能性が示唆された。
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