研究概要 |
植物の環境ストレス耐性を主として水分ストレス耐性に目標に焦点を合せて検討をすすめた。対象植物は主としてイネ科草類と飼料作物ととりあげ,その研究成果は,提出した別刷にまとめてある。 供試植物の水分ストレス耐性の評価は基本的には相対生長率によることが草類,ないしは飼料作物の栽培目的から考えて最も妥当であるとした。 またこれらの研究の展開は,圃場,水耕栽培により,供試植物を生育させ,圃場栽培での水分ストレス条件の設定はセラミック管センサ-と自動潅水装置により,また水耕の場合はポリエチレングライコ-ル(PGA)ないしはマニト-ルによる液の水ポテンシャル調節によった。その結果 (1)PGAによる細胞膜安定性(CMS):CMSは耐水分ストレス性と高い相関関係が成立し,また,細胞膜安定性の一つの要因である細胞液の浸透圧は,高温期には“カリ"が,低温期には水溶性糖が重要な役割を担っている。 (2)耐水分ストレス性と細胞膜脂質の質と集積との関係:水分ストレス耐性の高いロ-ズグラスと低いハトムギを主として供試し,ストレス下ではC^0_<18>よりもC^<2〜3>_<18>の方が集積し,その集積能はロ-ズグラスで高かった。また膜ATPase能については両者での差異は明瞭ではなかったが,測定法,膜分離法の改良が必要である。 (3)耐水分ストレスと水分(D_2O,或いはH^3_2O)の吸収,移動,蒸散との関係ストレス耐性の高い植物はストレス条件下で吸水能を高く,蒸散能も高く維持しうる。害官接合部位の水移動抵抗は低いことが明らかであった。 また,D_2O H^3_2Oの供用により,組織構成物質へのH^3ないしはDの取込み,あるいは組織細胞液と吸収移動水の交換性の評価値もまた,耐水分ストレス性のパラメ-タとなしうることを明らかにしえた。
|