研究概要 |
脳腫瘍細胞における微量のCキナ-ゼアイソザイムの発現とその含量を解析する目的で、3種のアイソザイムを特異的に認識するモノクロ-ナル抗体を用いた非競合固相型エンザイムイムノアッセイ法(EIA法)を開発した。このEIA法にてtypeI Cキナ-ゼは4.1ng,typeIIは0.65ng,typeIIIは2.5ngまで測定可能となった。このEIA法を用いて神経膠芽腫細胞株(Aー172,SKーMGー1,SKーMGー4)に含まれるCキナ-ゼアイソザイムを検討したところ、これらの細胞株は全てtypeIII Cキナ-ゼのみを発現し、定量値は各々127.6,248.8,148,5ng/mg蛋白であった。一方神経芽細胞腫においては、typeIIのみを発現し389.5ng/mg蛋白であった。この結果は従来の定性的解析法(ウェスタンブロット・カラムクロマト法)の結果と一致しており、Cキナ-ゼアイソザイムが脳腫瘍の細胞型の評定に役立つ可能性と、その際このEIA法が有益な方法になり得る事を示唆した。一方カルモデュリンキナ-ゼIIに関しては、特異的阻害剤KNー62の開発に成功した。KNー62はカルモデュリンキナ-ゼIIをki値0.9μMで阻害するが、他のキナ-ゼについては100μMで全く阻害活性を認めなかった。阻害機構を検討したところ、KNー62はカルモデュリンと拮抗し、さらにKNー62アフィニティ-カラムにカルモデュリンキナ-ゼIIが結合する点とあわせ、キナ-ゼIIのカルモデュリン結合部位に作用して阻害活性を現わすと考えられた。^<32>P正リン酸でラベルしたPCー12D細胞株をイオノファ-で刺激するとキナ-ゼIIの自己リン酸化が認められるが、KNー62は濃度依存的性にこの自己リン酸化を阻害した。KNー62はin vitro,in vivoのいずれにおいても非常に有用なtoolとなると考えられる。
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