研究概要 |
種々の細胞応答における蛋白質リン酸化酵素の生理的役割について、特異的阻害剤を用いて検討した。その結果、PC12細胞においてカルモデュリンキナ-ゼIIの特異的阻害剤であるKNー62は高カリウム刺激により惹起するチロシン水酸化酵素のリン酸化反応を抑制し、DOPA生成をも抑制する。しかし、Forskolinによって上昇するチロシン水酸化酵素のリン酸化およびDOPA生成には影響を与えないことからも、細胞内カルシウム濃度の上昇に伴うチロシン水酸化酵素のリン酸化および活性化機構にはカルモデュリンキナ-ゼIIが関与していることが明かとなった。また、cAMPー依存性蛋白質リン酸化酵素(Aーキナ-ゼ)の特異的阻害剤であるHー89を用いた実験結果から、PC12細胞においては細胞内カルシウムおよびcAMPにより上昇するimmedeately early genes(IEGs)の発現はともにAーキナ-ゼが関与していることが明かとなった。これら蛋白質リン酸化酵素阻害剤を用いることが蛋白質リン酸化酵素の生理的役割解明の良い手段であろうと考えられる。 さらに、ウサギ脳より分子量80kDaのカルモデュリン依存性蛋白質リン酸化酵素をrenaturation blotting assay(RBA法)により見いだした。本酵素はその分子量、基質特異性、KNー62,MLー9,Wー7を用いた阻害剤感受性から、新しいタイプのカルモデュリン依存性蛋白質リン酸化酵素と考えられた。
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