研究概要 |
細胞内情報伝達の概念が一般化しつつある現在、その中心的役割を担っていると考えられる蛋白質リン酸化酵素の機能研究が、正常及び病態時の細胞機能の解明に必須であると考えられる。本研究に於ては、脳腫瘍細胞における微量のCキナ-ゼアイソザイムの発現とその含量を解析する目的で、3種のアイソザイムを特異的に認識するモノクロ-ナル抗体を用いた非競合固相型エンザイムノアッセイ法(EIA法)を開発した。その結果、Cキナ-ゼアイソザイムが脳腫瘍の細胞型の評定に役立つ可能性と、その際このEIA法が有益な方法になり得ることを示唆した。また、従来のtype I,II,IIIに対する抗体に加えて、δ型及びξ型と呼ばれるCキナ-ゼ亜種(nPKC)に対するペプチド抗体を作製し、その組織及び細胞特異的発現を調べた。その結果、両生類の網膜では哺乳類のようにtype II及びIII Cキナ-ゼは存在せず、δ型及びξ型特異的ペプチド抗体に反応するCキナ-ゼが発現していた。またξ型Cキナ-ゼは、哺乳類では小脳プルキニエ細胞の核内に局在することが判明した。これらに加え、蛋白質リン酸化酵素自身の生理的意義を検討するため、カルモデュリンキナ-ゼII,cAMP依存性蛋白質リン酸化酵素、カゼインキナ-ゼIの特異的阻害剤(KNー62,Hー89,CK17)を創製した。これら特異的阻害剤を用いて種々の細胞応答とそれに関与する蛋白質リン酸化酵素について検討したところ、GABAの放出反応、海馬における長期増強とカルモデュリンキナ-ゼII、神経突起の伸長、immediately early geneの発現とcAMP依存性蛋白質リン酸化酵素との関係が明かとなった。
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