研究概要 |
本研究の目的は3種類の新しい悪性腫瘍マ-カ-を癌の病理診断の補助手段として実用化することであり、平成2年度中に以下の成果を挙げた。1.癌細胞核DNAの不安定性:(1)20例の人癌の生検、手術および剖検組織、500例の剥離細胞塗抹標本でAcridine orange(AO)による癌細胞蛍光分染の至適条件を検討した結果、RNase,37℃,1h処理後、2NHCl,30℃で凍結切片では5分、剥離塗抹標本では8.5分であることが判明した。(2)同じ組織のホルマリン、70%エタノ-ルあるいはエタノ-ル・アセトン混液で固定したパラフィン切片上で2NHCl,30℃で加水分解を行い抗二重鎖DNA抗体(Chemicon MABO31)による免疫染色を行いホルマリン固定標本では1.5h、その他の固定標本では30分の至適加水分解時間が定められた。(3)抗シチジン抗体を作製して10例の人癌切片標本で分染条件を検討する予備実験の結果、RNase,37℃,30分、Protease,37℃,30分、2NHCl,30℃,30分の至適前処理条件が求められた。これらの条件下では全例において明瞭な癌細胞の分染が得られ、癌細胞核DNAの不安定性は全癌細胞に共通するマ-カ-であると結論された。2.ジャガイモレクチン(STA)結合糖蛋白:(1)人甲状腺癌のcDNAライブラリ-をλgt11のベクタ-に組込み、E.coli(Y1090)に導入し、STA結合糖蛋白質を合成するE.coliコロニ-とλgt11ブラ-クを得た。ついでこの変異E.coliを用いてマウスを免疫し、STA結合糖蛋白質に対するポリクロ-ナル抗体を得て免疫染色を行い20例の人癌全例で陽性所見を得た。(2)λgt11からSTA結合糖蛋白質のcDNAを精製し、in situ hybridizationにより10例の人癌組織全例で陽性結果を得た。3.癌細胞の活性酸素産生:マウス皮下に移植した扁平上皮癌の凍結切片上に1mM MCLAあるいは25mg/mlのLiciferaseーLuciferinを浸み込ませたセルロ-スアセデ-ト膜を密着させて癌組織から発生する活性酸素を高感度フィルムおよびVIMによるPhoton countingにより検出した。
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