研究課題/領域番号 |
01440031
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉川 昌之介 東京大学, 医科学研究所, 教授 (80012714)
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研究分担者 |
岡田 信彦 東京大学, 医科学研究所, 助手 (80194364)
福田 一郎 東京大学, 医科学研究所, 助手 (10242108)
戸辺 亨 東京大学, 医科学研究所, 助手 (70207596)
笹川 千尋 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (70114494)
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キーワード | 赤痢菌 / ビルレンス / ビルレンス遺伝子 / 染色体 / 細胞間拡散 / 下痢 |
研究概要 |
細菌性赤痢発症に到る過程は、赤痢菌が腸上皮細胞へ食作用様運動を誘発し(一次細胞侵入)、これにより細胞内へ侵入した菌が分裂増殖しつつ隣接細胞へ再侵入(二次細胞侵入)する2つの大きな段階から構成されている。我々の研究から一次細胞侵入には菌の在する大プラスミド上のビルレンス遺伝子群が、二次細胞侵入には大プラスミドと染色体上の遺伝子群が各々関与していることが示されてきた。しかし本研究からも明らかなように、大プラスミド上の一次細胞侵入性遺伝子発現は、大プラスミド上の2つの正の調節遺伝子の支配下にあるばかりでなく、染色体上のビルレンス遺伝子の調節も受け、したがって染色体性ビルレンス遺伝子群の役割は多岐に及んでいることが推定されている。そこで最終年度は、B群赤痢菌YSH6000T株にTn10挿入を行い、約2000株を組織培養細胞感染系により細胞間拡散不能変異株のスクリーニングを実施した。その中の1つVacJ変異株のビルレンス関連形値と該遺伝子領域の解析を行い以下の興味ある知見を得た。vacJ遺伝子は本研究で作製したNoriJ断片上にあり、最終的に大腸菌K-12株染色体地図の54分近傍にマップされた。本遺伝子は赤痢菌の細胞間拡散に係わり、細胞侵入あるいは細胞内拡散には全く無関係であった。racJ変異株の感染細胞内に於ける動態を電子顕微鏡で調べた結果、隣接細胞値に於て偽足の中から二重膜を破壊する機能に異常が認められた。vacJ領域の詳細な遺伝子解析の結果、本遺伝子は28KDaの外膜分秘性のリポ蛋白質をコードしていた。塩基配列に基づくVacJのアミノ酸配列は既知蛋白との相同性が認められず、新しい遺伝子であると推定された、本年度の研究によって、赤痢菌染色体性ビルレンス領域の役割は()LPS合成,()菌の代謝、()大プラスミド上のビルレンス遺伝子調節に加え、()細胞間拡散の合計4つに閲与していることが明らかとなった。
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