ヒトβ_1受容体遺伝子を単離する目的で、ヒトβ_1アドレナリン受容体cDNA Sma I断片、1.3kbを放射性デオキシCTPで標識プロ-ブに用い、ヒト胎盤ゲノムDNAライブラリ-をhigh stringency条件下でスクリ-ニングし、8つの陽性クロ-ンを得た。その内、ゲノムクロ-ン1には、ヒトβ_1アドレナリン受容体遺伝子全域を含むSac I断片、14.8kbが挿入されていた。他の7つのクロ-ンについては、詳細な解析を行っていないが、おそらく“7回細胞膜貫通型受容体"遺伝子であろうと考えられる。ゲノムクロ-ン1をpUC 19等のプラスミッドベクタ-にサブクロ-ニングし、アルカリ変性後、シ-クエンス反応の鋳型として用い、その塩基配列をSangerらのジデオキシ法を用いて決定した。しかし、5'領域には非常にGC含有量が多い、通常のシ-クエンス反応では、塩基配列を読むことが困難な部位が数多く存在した。そのため、Taqポリメラ-ゼを用いての高温下でのシ-クエンス反応や、single strand DNA binding蛋白質存在下でのシ-クエンス反応など、シ-クエンス反応に工夫が必要であった。その結果、ヒトβ_1アドレナリン受容体遺伝子の全域にわたり構造を明らかにすることができた。さらに、現在in vitroの系で、β_1アドレナリン受容体5'領域のプロモ-タ-活性を測定し、転写調節機構に関与する部位の同定、転写開始部位の同定、3'領域のmessenger RNAの安定性に寄与している部位の同定等を行っている。
|