多能性造血幹細胞の単離・増幅・保存と新しい臨床応用への発展

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01440049
• 研究機関: 自治医科大学
• 研究代表者: 三浦 泰定 自治医科大学, 医学部, 教授 (60048965)
• 研究分担者: 高木 省治郎 自治医科大学, 医学部, 講師 (20158992) ; 小松 則夫 自治医科大学, 医学部, 助手 (50186798) ; 須田 年生 自治医科大学, 医学部, 講師 (60118453)
• キーワード: 造血幹細胞 / 造血因子 / モノクロ-ナル抗体 / CD34 / CD33 / DIF / 破骨細胞 / 脾コロニ-

研究概要

1)未熟なヒト幹細胞に表現されるCD_<34>モノクロ-ナル抗体と、やゝ分化の進んだ顆粒球系細胞に表現されるCD_<33>等を組合せ細胞分離装置を用いて細胞分化にともなう形質の変化を検討した。未熟なCD_<34>陽性細胞は各造血因子に反応して各種コロニ-をつくる。又ILー3等の造血因子の存在下ではCD_<34>^+、CD33^+細胞は培養してゆくうちにCD_<34>^-CD_<33>^+又は等表面形質が変化してゆくことがわかった。ILー5による好酸球の分化ではマウスの場合と同様に、CD_<34>^+細胞がまずILー3又はGーCSFの作用によりやゝ成熟した幹細胞になり、そこにILー5が働くことが示唆された。
2)5FU処理マウスの骨髄および脾細胞を支持細胞株PAー6の上で培養したのち放射線照射マウスに移植し、脾コロニ-形成能があることを証明し細胞の増殖制御につき詳細を検討した。
3)Bリンパ球、NK細胞が、骨髄系幹細胞と共通の祖先をもつことを証明した。この場合にフィダ-層が必要である。この方法を応用してマウス胎児肝の血球産生について観察した。胎生15日よりBリンパ球コロニ-形成細胞が検出されること。13日目肝細胞を間質細胞株STー2細胞と5日間培養するとそれらの細胞はILー7に反応して増殖し、B細胞になることを見出した。
4)ヒト巨核球コロニ-株細胞UTー7を樹立した。細胞はGM-CSF、ILー3、エリトロポエチン、ILー6にそれぞれ依存し、細胞にはレセプタ-を発現している。このうちエリトロポエチンレセプタ-について詳細に検討した。
5)Differentiation inducing factor(DIF)は正常造血幹細胞に対し自身が造血コロニ-形成を刺激することはないが、液体培養で赤芽球前駆細胞(BFU-E)を長期間支持することを見出した。
6)破骨細胞も骨髄系幹細胞と共通の祖先をもつことを証明した。
以上、当初の目標にそって着実に研究が進んでいる。

研究成果

• [文献書誌] Komatsu,N.,Suda,T.,Moroi,M.,Tokuyama,N.,Sakata,Y.,Okada,M.,Miura,Y.,et al.: "Growth and differentiation of a human megakaryoblastic cell line,CMK." Blood. 74. 42-48 (1989)
• [文献書誌] Ema,H.,Suda,T.,Sakamoto,S.,Tomonaga,T.,Tsunoda,J.,Muroi,K.,Miura,Y.,et al.: "Effects of the in vivo administration of recombinant human granulocyte colony-stimulating factor following cytotoxic chemotherapy on granulocytic precursors in patients with malignant lymphoma." Jpn.J.Cancer Res.80. 577-582 (1989)
• [文献書誌] Kurihara,N.,Suda,T.,Miura,Y.,Nakauchi,H.,Kodama,H.,Hiura,K.,et al.: "Generation of osteoclasts from isolated hematopoietic progenitor cells." Blood. 74. 1295-1302 (1989)
• [文献書誌] Muroi,K.,Ito,M.,Sasaki,R.,Suda,T.,Sakamoto,S.,Miura,Y.: "Treatment of drug-induced agranulocytosis with granulocyte-colony stimulating factor." The Lancet. 2. 55 (1989)
• [文献書誌] Suda,T.,Okada,S.,Suda,J.,Miura,Y.et al.: "A stimulatory effect of recombinant murine interleukin-7(IL-7)on B-cell colony formation and inhibitory effect of IL-1alpha." Blood. 74. 1936-1941 (1989)
• [文献書誌] Muroi,K.,Sasaki,R.,Miura,Y.,Ohyashiki,K.: "Medium pH determines the differentiation of human promyelocytic leukemia cells to basophils or eosinophils by culturing in a protein-and serum-free medium." Leukemia Research. 13. 157-163 (1989)
• [文献書誌] Akai,K.,Veda,M.,Kawanishi,G.,Miura,Y.,Suda,T.: "Experimental Hematology Today 1988" Springer Verlag, 8 (1989)