研究概要 |
ヒト乳癌における増殖因子受容体の多様性と各種増殖因子に対する反応を検討し、それらの特徴を明らかにすると共にこれらレセプタ-を介した乳癌治療法の開発を目的として1.各種乳癌細胞における増殖因子受容体の発現と特徴2.各種乳癌細胞のin vitroでの増殖因子に対する反応3.c-erbB-2産物に対するモノクロ-ナル抗体の作成4.ヒト乳癌組織における各種増殖因子受容体の発現について検討を行い以下の結果を得た。1.7種の乳癌細胞についてER,EGFRおよびc-erbB,c-erbBー2,c-erbAの増幅と発現を検討した結果ではER陽性株がMCF-7,MDA-MB-361,EGFR陽性株がBT-20,c-erbBー2産物過剰産生株がBT474,SK-BR-3,MDA-MB-361と乳癌細胞株の増殖因子受容体には多様性が認められた。2.MCF-7のみがE2投与で濃度依存的に増殖が促進された。EGFR過剰産生株であるBT-20,SK-BR-3ではEGFによって増殖が抑制された。正常乳腺上皮細胞であるHBL100はEGFで増殖が促進された。TGF,T3投与ではいずれの細胞株も細胞数の変化は認められなかった。3.c-erbBー2産物N端側部分15個のアミノ酸からなるペプチドを抗原としてマウスに免疫しc-erbBー2産物と反応するモノクロ-ナル抗体が得られた。本抗体は免疫染色、免疫沈降法が可能である。4.ヒト乳癌患者から手術時に得られた乳癌組織でER,EGFR,c-erbB-2産物を免疫組織学的に検索すると各々の陽性率は33,22,30%でERとEGFRには負の相関が認められ、連続切片上同一細胞が染色されることはなかった。ERとc-erbBー2,EGFRとc-erbBー2の染色性には相関はなく、同時に染色された症例では同一細胞が染色されていた。
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