研究概要 |
ヒト乳癌における増殖因子・受容体の多様性とその臨床学的意義を明らかにし,更にそれらの特性に基づいた治療法の確立を目指して研究を進めてきた。まず,ヒト乳癌における増殖因子・受容体の多様性とその臨床特性を遺伝子レベルで明らかにするため,線維芽細胞増殖因子関連物質をコ-ドしているintー2癌遺伝子,および上皮増殖因子受容体をコ-ドしているCーerb Bー2癌遺伝子,核蛋白をコ-ドしているCーmycの増幅を,それぞれのプロ-ブを用いてslot blot hybridization法で検討すると,intー2およびcーerb Bー2癌遺伝子にのみ,各々約20%近くに増幅が認められた。intー2もしくはcーerb Bー2癌遺伝子の増幅群と非増幅群についてその背景因子を検討すると,その間には有意差を認めなかったが,KaplanーMeier法で根治術後の累積生存率を求め,比較検討すると増幅群の生存率はそれぞれ有意に不良であった。つぎに,cーerb Bー2癌遺伝子産物の発現と臨床特性の検討を行った。cーerb Bー2産物の発現はcーerb Bー2産物のinternal domainを認識するポリクロ-ナル抗体によるABC法をホルマリン固定パラフィン切片によって行った。全症例の20%の症例が陽性と判断された。これら陽性症例の累積生存率は全症例で検討しても,またStage別に層別化を行っても陰性症例に比して有意に不良であった。そこで,これら予後不良の症例に対する集学的治療を開発する目的で,上皮増殖因子受容体やcーerb Bー2産物を認識するモノクロ-ナル抗体とhemitoxinであるgeloninとの接合体を作製し,各種癌細胞に投与したところ各々の産物を過剰発現している癌細胞に特異的に殺細胞効果が認められた。
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