腎移植適応拡大に関する研究ーABO血液型不適合間腎移植と既存抗体陽性例の腎移植ー

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01440053
• 研究機関: 東京女子医科大学
• 研究代表者: 太田 和夫 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40090659)
• 研究分担者: 田辺 一成 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (80188359) ; 早坂 勇太郎 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (30120033) ; 高橋 公太 東京女子医科大学, 医学部, 助教授 (90101857) ; 清水 勝 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (20048987) ; 阿岸 鉄三 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70090660)
• キーワード: 腎移植 / ABO血液型 / ABO血液型不適合 / 既存抗体 / 腎移植適応拡大 / 抗A抗B抗体 / 拒絶反応 / 脾摘

研究概要

腎移植適応拡大の目的のために平成4年2月までに東京女子医科大学ではABO血液型不適合腎移植を38例に施行したので、その成績を報告する。
(1) 対象症例
対象症例は、11〜58才の慢性腎不全患者で、男性25例、女子13例である。透析期間は1〜17年であり、年々、透析期間の長い症例が多くなっており、死体腎(献腎)がいかに少ないかを示している。
血液型の組合わせは、A→O:14例、B→O:11例、B→A:4例、AB→A:4例、AB→B:3例、AB→O:2例であり、レシピエントの71%はO型である。
(2) 方法
(1) 移植前の抗Aー抗B抗体の除去:移植前の抗A・抗B抗体を除去するために、血漿交換と免疫吸着を行ない、移植前の抗体価を生食法、間接ク-ムス法で16倍以下にした。
(2) 移植:移植はMurrayの原法で行ない、移植直後、抗体産生を抑制するために脾摘を施行した。
(3) 成績
生存率では、6ヶ月:85%、1年6ヶ月:82%、2年82%であり、生着率では、同期間それぞれ92%、88%、88%であった。合併症についてはABO血液型適合例とかわりはなかった。
(4) 結論と考察
対象者をみると、小児が7例(18%)、O型が27例(71%)を占め、また長期透析患者が増加しており、わが国の慢性腎不全の特徴を示している。これらの点からみてもABO不適合例の移植は、慢性腎不全の治療として有用である。

研究成果

• [文献書誌] 太田 和夫 他: "ABO不適合腎移植の1例" 腎と透析. 27. 117-121 (1989)
• [文献書誌] 阿岸 鉄三 他: "ABO血液型不適合者間腎移植に対する免疫吸着処置" 人工臓器. 20. 318-323 (1991)
• [文献書誌] Tetsuzo Agishi,et al.: "Immunoadsorption of antiーA or antiーB antibody for successful kidney transplantation between ABO incompatible pains and its limitation." ASATO Transactions. 37. 496-498 (1991)
• [文献書誌] 高橋 公太 他: "ABO血液型不適合間生体腎移植13例の経験" 日本移植学会雑誌. 26. 95-104 (1991)
• [文献書誌] Kota Takahashi,et al.: "Prophylactic use of a new immunosuppressive agent,deoxyspergualin,in patients with kidney transplantation from ABOーincompatible or preformed antibodyーpositive donors." Transplantation Proceedings. 23. 1078-1082 (1991)
• [文献書誌] 高橋 公太 他: "腎移植適応拡大の試みーABO血液型不適合腎移植" 腎と透析. 32. 27-33 (1992)
• [文献書誌] Kota Takahashi,et al.: "Therapeutic Plasmapheresis X." EXAO Press,Cleveland, 200 (1991)
• [文献書誌] 太田 和夫,阿岸 鉄三 監修;高橋 公太 編集: "ABO血液型不適合腎移植" 日本医学館, 121 (1991)