研究概要 |
最終年次は、温および冷阻血肝障害の機構をCytokineおよびProstanoid産生の観点から検討した。体重17〜32kgの雑種豚を用い、60分間の完全温阻血モデル(Hepatic Vascular Exc/usion)を作成し、阻血解除前后の肝静脈血、門脈血および大動脈血を経時的に採取、血清中Prostanoid活性(PGE_2,ThromboxaneB_2および6-keto-PGF1α)を測定、比較した。非生存群では阻血解除后1時間に全ての血中PGE_2値が著しく上昇(特に肝静脈血中レベル)するのに比し、生存群では上昇が有意に抑制されていた(非生存群;4923±893pg/ml,mean±SEM,n=7,生存群;2270±773pg/ml,n=7)。また、PGE_2は活性化kupffer細胞により産生される可能性が強く示唆された。さらに、ラットを用いた我々の60分間温阻血肝障害モデルにて、阻血/再潅流后の血中TNF-α活性を検討したところ、免疫抑制剤Cyclosprineで前処置した場合、再潅流3時間后にみられる最高値(210±80pg/ml n=7)が著明に抑制されていた(121±60pg/ml n=7)。一方、長期冷保存ラット肝移植モデル(6時間単純冷却保存-Euro-Collins液、の同所性肝移植)にてCyclosporineをRecipientに前投与した場合、一週間生存率の著明な改善(0/5、非投与群、VS4/5、投与群)がみられ、さらに移植后2時間の血中TNF-α値および肝類洞内皮細胞障害の著明な改善を認めた。 以上の結果より、免疫制御機構の肝保存延長効果のメカニズムとしては、少くても、CytokineおよびProstaglandinの関与が考えられた。接着因子の関与については、最終成果として報告予定である。
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