研究概要 |
従来、経食道ドプラ心エコ-図法はきわめて有用な診断法ではあったが、単に横断面のみしか描写しえないという限界があった。初年度(平成元年)において、私どもは世界にさきがけて、直行同時2断面・経食道ドプラ断層プロ-ブ(5MHz,32×32エレメント,外径13.5ミリ)によってサイド・バイ・サイドにバイプレ-ン映像をディスプレイする方法を開発した。これを260例の心臓血管外科手術患者の術前・術中・術後に使用して、その有用性,安全性を確立した。第2年度(平成2年)において、臨床応用を拡大し通算計450例に達した。これらのデ-タを他の診断法や術中所見と対比して、このバイプレ-ン本法の特徴と限界を検討した。僧帽弁逸脱形態の詳細な分折、解離性大動脈瘤におけるエントリ-の正確な検出、心房中隔欠損口のサイズの計測等において特にバイプレ-ンの有用性が顕著であった。一方、この方法の2つの欠点が明らかになった:(1)トランスジュ-サが2個あること、(2)2画面はリアルタイムでなくて、心電図と同期して再生されたものであることなどである。最終の第3年度(平成3年度)において、前述の2つの欠点を解決した:新らしく1個のトランスジュ-サで2個分の働きをするマトリックス・バイプレ-ン・トランスジュ-サと2画面の同時スキャンの干渉を防ぐソフトウェアを開発した。このマトリックス・プロ-ブとリアルタイム・バイプレ-ンのソフトウェアの併用によって、新らしい診断法の開発という最終目標がほぼ達せられたものと考えられた。本法が他の方法ではとうてい得られない情報を提供する特異的な有用性は(1)解離性大動脈瘤の治療方針の決定、(2)僧帽弁逆流の解剖の詳細な分折、(3)先天性心疾患における経力テ-テル的心内修復のモニタなどにおいて特に重要である。国内外において、急速にバイプレ-ン経食道プロ-ブの応用が拡しており、本法が新らしい診断法として確立しつつある。
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