習慣性流産に対する免疫療法では、夫の末梢血単核球を妻の皮内に免疫することにより、夫アロ抗原に対する妻のT細胞による同種免疫の抑制が起こってくるわけである。今年度はその機構についてさらに検討を加えた。他人由来の末梢血単核球が侵入することにより、どのような機構で免疫抑制が誘導されるかについて検討を行った。まずアロHLA-DRに特異的に増殖反応を示すCD4陽性T細胞クローンを樹立した。このT細胞クローン、TM-14を刺激細胞として、TM-14ドナーと同一人あるいは他人由来末梢血リンパ球を繰り返し刺激することにより、TM-14に対して反応するT細胞株を得た。AI-1T細胞株はTM-14ドナーと他人由来のCD8陽性T細胞株であり、AI-2はTM-14ドナーと同一人由来でCD4T細胞株である。 -1、AI-2いずれもTM-14のアロ抗原に対する増殖反応を特異的に抑制する。AI-1はTM-14に対して特異的細胞障害活性を有しており、この細胞障害活性は標的細胞であるTM-14を抗HLAクラスI抗体処理するより阻止されることにより、TM-14特異的エピトープをHLAクラスIの拘束下で認識障害すると考えられる。AI-2はAI-1と異なって、細胞障害活性無しにTM-14の増殖反応を阻止する。従って第一の機構として、T細胞間のネットワークによる免疫抑制機構が考えられる。また、頻回免疫された患者の血液中にアロ抗原反応性T細胞に反応してその増殖反応を抑制する抗体が検出される例を証明した。従って抗T細胞イデイオタイプ抗体の産生による免疫抑制が第二の機構として考えられる。さらに免疫療法開始前に比べ、開始後では妻末梢血NK活性が低下していることが示された。しかしNK細胞が習慣性流産にどのように関わっているかの詳細は不明である。
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