乳幼児の弱視・斜視における両眼視機能異常の治療に関する研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01440073
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 粟屋 忍 名古屋大学, 医学部, 教授 (00023755)
• 研究分担者: 田中 浩人 名古屋大学, 医学部, 助手 (50227170) ; 都築 欣一 名古屋大学, 医学部, 助手 (70197739) ; 矢ケ崎 克哉 名古屋大学, 医学部, 講師 (70174480)
• キーワード: 両眼視機能 / 立体視 / Checkerboard pattern刺激 / 内斜視 / 外斜視 / Static Random Dot / Dynamic Random Dot

研究概要

乳幼児の弱視、斜視の治療において、感受性期間内におこなえば視力の正常レベルへの回復はほぼ可能である。これに対して両眼視機能、とくに立体視の回復はほとんど不可能に近く、いまだ大きな課題を残している。この大目的のために、表記の命題に取組んでいるが、そのために乳幼児における立体視の正常発達を把握する必要があり、さらにそのためには、生後低月齢の乳幼児の立体視を客観的に把握する方法の確立が必要である。従来より我々は、この研究に取り組み、TVーRandom Dot Stereo Testなる検査装置を確立した。昨年度は本検査装置を用いて、正常乳幼児の立体視の月齢別発達をまとめて報告した。本年度はこの検査法における成功率の上昇と、偽陽性反応の低下と検査結果の確実性の確認のために、本検査前の予備検査として赤緑フィルタ-を通さずに直接TVスクリ-ンを見せることにより、円図形を追視する衝動性眼球運動を予め行うことにより、本検査法によって得られる値の確認を得ることが可能となった。また立体視の検査法として従来用いられているStatic Random Dot Testに対して、本年はDynamic Random Dot Testを導してその相違を検討し、さらに立体視成立時における脳内の生理機構の把握に取り組んでいるが、この点に関するデ-タの確立にはさらになお時間を要すると考えられる。さらに最も大切な問題である斜視における立体視の獲得については、昨年は多数の外斜視例についてその成果をまとめたが、本年度は内斜視について症例を重ねてCheckerboard Pattern刺激に対する反応を検討した。その結果1日に長時間に亘たり、あるいは短時間でも〓回に行った例は、立体視の回復を示した例を認めた。しかし内斜視は外斜視に比して、発症時期が早期の例が多く、視路における立体視回路の成立機序に大きな問題を残している。

研究成果

• [文献書誌] Shinobu Awaya,et al: "Studies of stereoacuity in infants by the TVーRandom Dot Stereo Tests" Strabismus and ocular motility disorders Proceedings of the 6th meeting of the Int.Strab.Assoc.109-114 (1990)
• [文献書誌] 矢ケ崎 悌司,粟屋 忍,他: "先天白内障手術の検討ー合併症と視力予後ー" 眼科臨床医報. 85. 431-437 (1991)
• [文献書誌] 矢ケ崎 克哉,粟屋 忍,他: "暗順応・明順応視野測定の臨床応用 1)装置の試作" 日本眼科学会雑誌. 94. 1162-1168 (1990)
• [文献書誌] 岡田 祐子,吉岡 均,三宅 三平,粟屋 忍: "生直後の片眼完全閉瞼例の視機能" 眼科臨床医報. 84. 330-332 (1990)
• [文献書誌] 水上 寧彦,粟屋 忍,他: "TVーRandom Dot Stereo Testによる乳幼児の立体視の研究ーその後の検討" 日本眼科学会. 95. (1991)
• [文献書誌] 岡田 祐子,粟屋 忍,他: "Teller Acuity Cardsによる乳幼児の視力検査" 眼科臨床医報. 85. 1224-1227 (1991)
• [文献書誌] 増田 寛次郎・本田 孔士編,粟屋 忍(分担): "疾患別眼治療マニュアル「小児眼科」" 医学書院, (1991)
• [文献書誌] 稲富 昭太、宇山 昌延、所 敬編,粟屋 忍(分担): "一般臨床医のための眼病変の知識「弱視」" 金芳堂, (1991)