歯科材料は生体内で腐食し、材料成分またはそれらの分解産物が微量溶出し、生体障害の一因となると考えられている。本年度はインプラント用金属材料のTiー6Alー4V及びTiー5Alー2.5Fe合金について生体模擬条件下における組成金属の溶出量及び溶出物の感作性について検討した。 1.Ti合金からの組成金属の溶出:Tiー6Alー4V(以下TAV合金)及びTiー5Alー2.5Fe(以下TAF合金)の試験片をフリ-ズミルを用いて微粉末化し、組織培養用培地EagleMEMに300mg/2ml浸漬し、100回/分/3時間/日振盪下37℃で70日間インキュベ-トした。培地は1週間ごとに更新した。採取した浸漬液中の元素のうちTiは本補助金で購入したプラズマ発光装置で、その他元素はフレ-ムレス原子吸光装置で測定した、1〜7日浸漬、8〜21日浸漬及び22〜70日浸漬においてTAV合金ではTiの溶出量は検出限界以下であった。TAF合金では1.4及び1.1pg/mg合金/日の溶出を認めた。TAV合金では1〜7日、8〜21日及び22〜70日の各浸漬期間にAl73.0±28.1、52.5±12.1、1.4±1.1、V194.3±17.6、95.3±13.3、16.5±4.7pg/mg合金/日の溶出を、TAF合金ではAl25.7±6.3、4.7±0.9、0.4±0.4、Fe31.9±34.2、17.3±1.6、3.0±0.6pg/mg合金/日の溶出が認められた。 2.Ti合金溶出物の感作性:合金浸漬液についてマウスC57BL/6を用いたリンパ球幼弱化試験を実施し、現在継続観察中である。 以上の結果からTi合金は生体内で良好な耐食性を有し、生体適合性を有するとされているが、体液模擬条件下で組成合金の溶出があることが明らかにされた。特に近年中枢神経及び骨の疾患との関連が注目されているAlの溶出が認められたことはTi合金の長期埋入においてその安全性上注目すべきことである。
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